トランプ米政権、「国連人権理事会」離脱のなぜ?
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トランプ米政権が6月19日、国連人権理事会からの脱退を表明した。ポンペオ国務長官はその理由として、中国やロシアといった「人権侵害国」が理事国になれるような仕組みは受け入れがたいこと、イスラエルに対する恒常的な偏見があること――などを挙げた。確かに、国連人権理はこれまでも欠陥が指摘されてきた。ただ、内部からの改革に米国が見切りをつけ、またしても国際的な枠組みに背を向けた影響は小さくない。
米大使「国連人権理は政治的偏見の汚水槽」

米国務省にポンペオ長官とともに現れたニッキ・ヘイリー国連大使は、「偽善的で自己満足のための組織」「『人権侵害国』の擁護者で、政治的偏見の汚水槽」などの激しい表現で国連人権理事会を批判。トランプ政権が1年前から求めていた人権理の「大規模かつ抜本的な改革」が一向に進まない以上、「米国が残留して正当性を付与することはできない」と脱退を宣言した。
米国の対人権理批判は2点に集約される。一つは、人権を侵害してきた国でも理事国メンバーに簡単に選出される仕組みになっている点。もう一つは、米国の盟友イスラエルをアラブ諸国などが批判する主戦場となっている点だ。
人権理の理事国は47か国で、任期は3年。国連加盟国を五つの地域に分けた上で、理事国の数をアジア13、アフリカ13、ラテンアメリカ8、東欧6、西欧その他7と割り当て、国連総会での無記名投票で過半数以上の票を得られれば、票数が多い順に当選する。
ところが、同じ地域内で候補となる国を事前に調整したり、票のやりとりをしたりすることから、人権侵害が指摘される国でも比較的容易に当選が可能になっている。2006年の発足以来、107の国が理事国を務めたが、中には中国、ロシア、ベネズエラ、コンゴ民主共和国、サウジアラビア、パキスタンといった、国内の人権状況が決して芳しいとはいえない国々も名を連ねる。
一方、国連加盟国にはイスラエルと敵対してきたイスラム諸国が多く、人権理も例外ではない。ヘイリー大使は、この1年で人権理が採択したイスラエル非難決議は、北朝鮮、イラン、シリアを批判する決議の合計よりも多いことを挙げ、「理事会が人権ではなく、政治的なバイアス(偏り)に基づいていることの証左だ」と述べた。
トランプ政権は昨年6月以来、「各地域が理事国の割り当て枠よりも多くの立候補国を出し、無風選挙にならないようにする」「総会で行う理事国選の投票は記名制とする」「人権理で特定の国を集中的に議題にすることはやめる」などの改革案を提示したが、ほかの加盟国から十分な賛同を得られず、改革は進展していない。