日産、究極のエコカーFCVをやめるって…なぜ?

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【理由2】高圧水素タンクの問題

ホンダのFCV「クラリティ・フューエルセル」
ホンダのFCV「クラリティ・フューエルセル」

 かつて、“究極のエコカー”ともてはやされたFCVだが、現状では、二酸化炭素(CO2)の排出量をかえって増やすことになるとの指摘がある。それでは、地球温暖化抑制の流れに逆行し、本末転倒といわざるを得ない。

 ホンダは「FCXクラリティ」という先代のFCVを2008年にリース発売した際、35MPaの水素タンクを搭載していた。

 トヨタはこの時点で、すでに70MPaの水素タンクで実証実験車を走らせており、「なぜ35MPaなのか」という点をホンダの上席研究員に質問した。その際の答えは、「35MPaであればCO2を削減できるが、70MPaではかえってCO2排出量を増やしてしまうからだ」というものだった。

 その後、ホンダは2016年に発売したFCV「クラリティ・フューエルセル」に70MPaの水素タンクを搭載。この時、ホンダの開発担当者に、CO2排出量を増やしてしまうという高圧水素タンクの問題点は解決したのか聞いてみた。「未解決である」とする担当者に、「では、なぜ70MPaにしたのか」と質問すると、「水素ステーションの世界基準が70MPaになってしまっているからだ」との事情を明らかにした。

 世界の自動車メーカーが70MPaの水素タンクを搭載したFCVへの水素供給を標準化した背景には、トヨタをはじめ、米国のGM、ドイツのダイムラーなどが走行距離を延ばすために足並みをそろえたということがあった。

 というのも、35MPaでFCVが走行できる距離は350キロ・メートル程度で、それでは、1回の充電走行距離が200キロ・メートル(当時)のEVと目立った差がない。FCVの優位性を示すには、500キロ・メートル水準の航続距離を可能にする水素タンクの高圧化が必要だったのである。

CO2排出量が増える理由

キリンビール横浜工場(横浜市鶴見区)に設置された「スマート水素ステーション(SHS)」(2018年4月)
キリンビール横浜工場(横浜市鶴見区)に設置された「スマート水素ステーション(SHS)」(2018年4月)

 なぜ、70MPaの水素タンクだとCO2排出量がかえって増えてしまうのか。

 その理由は、水素充填のため、水素ステーション側では80MPaの高圧水素が必要になるが、気体の水素を800気圧程度に圧縮する際には温度が上昇する。これを冷やしながら圧縮する「プレクール」と呼ばれる工程が必要だからである。身近な例では、家庭用の空気入れで自転車のタイヤに空気を入れるとき、ポンプを押しているうちに、空気入れ自体が熱くなるのを経験した人もいるだろう。

 気体は圧縮すると温度が上がる。同時に、温度が上がれば気体は膨脹する性質がある。膨張させずに気体を圧縮するには冷やさなければならない。ホンダの研究者によれば、35MPaまでなら、冷却しなくても水素を圧縮し、FCVへ充填できる。しかし、70MPaになると冷却しなければならず、専用の冷凍機を用いることでCO2を排出してしまうという。

 Jハイムは官民共同で、2020年度までに水素ステーションを160か所ほど整備し、FCVを4万台程度普及させる目標を立てている。だが、EVは現時点ですでに、走行距離が300~400キロ・メートルに達しており、その上、急速充電器は全国に7000か所に広がっている。日産のEV「リーフ」の国内累計販売数は10万台に上る。

 これでは、FCVを量産する意味はほとんどないのではないか。

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32733 0 深読み 2018/07/12 08:20:00 2019/01/22 16:11:54 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180706-OYT8I50046-T.jpg?type=thumbnail

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