完了しました
「急回復」したシャープ
一方、鴻海傘下入りしたシャープの家電部門も元気を取り戻している。
そもそもシャープの家電事業はかつて、電子手帳やワードプロセッサ「書院」、左右両開き冷蔵庫、携帯電話、ウォーターオーブン「ヘルシオ」など、独創性と質の高さを兼ね備えた製品を生み出すことで定評があった。
2000年代前半に推し進めた液晶テレビ・パネルへの集中投資は一見、成功したかのように見えた。工場の地名をとった「亀山モデル」が一世を

しかし、結果的に液晶の「一本足打法」になり、家電事業全体への投資が不十分になった。そして液晶が「コモディティー化(日用品化)」し、差別化が困難になった結果、韓国や中国などのメーカーの攻勢に押され、家電事業の維持さえもままならない状況に陥った。
しかし、鴻海の買収後は、鴻海の郭台銘会長、シャープに送り込まれた戴正呉社長の
シャープのIoT戦略
冷蔵庫や洗濯機、電子レンジなど様々な家電がIoT化し、インターネットとつながる機能を持つ製品も多く、自前のシステムなどを構築し、利用料として継続課金(サブスクリプション方式)にするなどし、将来的にはリカーリング・ビジネス(商品販売後も、ネットにつないで自社のサービスを利用してもらうなどし、継続的に利益を上げられるビジネス)を目指しているようだ。
シャープも含めた各社は現時点で、家電がネットにつながることによるメリットをうまく訴求できていない、と筆者は考えている。しかし、同社では「闇雲に(ネットに)つながるサービスを始めて、(すぐに)採算が合わないからとサービスから撤退することは許されない」(シャープIoT事業本部の白石奈緒樹・副事業本部長)という。
なぜか。取扱説明書には短期間でサービスが終了する可能性があると記載していても、白物家電の耐用年数は10年ともいわれており、多くの人は製品を10年前後使い続ける。そして、次に買い替える時、途中でサービスを止めるようなメーカーの家電を選ぶだろうか。つまり、メーカーとしては、長期間、責任を持って続ける覚悟でサービスを始めなければいけない、というのだ。
さらに、自社の家電製品には自社で開発したクラウドコンピューティングシステムを用意し、責任を持ってサービスを提供すべきと考えているという。「安易に他社のソフトウェアを使うと、自社の(サービス展開の)自由度が下がってしまう」(白石氏)と言う。

最近のシャープ製品の好例としては、「ヘルシオ・ホットクック」などが挙げられる。昨年、ウォーターオーブンのヘルシオか、ホットクックでIoTを活用する「ヘルシオデリ」というサービスを始めた。
ヘルシオデリは、飲食店紹介サイト大手のぐるなびと組んで、有名レストランのシェフの料理の材料や作り方をメニューとしてデータ化。ネットで注文した食材のキットを、ウォーターオーブンの一部機種かホットクックのいずれかに入れ、セットしてボタンを押すだけで、家電がネット経由で調理情報を自動的に取得し、有名レストランのシェフが作る料理と同じものができ上がる仕組みだ。
ヘルシオデリは、家電がネットにつながるメリットを世に示すだけではなく、共働きの世帯が増える中「家事の時間を少なくし、おいしいものを食べよう」というコンセプトのもと、生み出されたそうだ。