ゆるキャラはどこへ消えた?
完了しました
ゆるキャラが姿を消したお役所の事情

「ゆるキャラは役目を終えた」「ついに、ブームが去った」と思う人も多いでしょう。しかし、私には別の理由があるように思えてなりません。
なぜなら、かつて地方自治体が積極的にPR活動をしていたのは、「ゆるキャラグランプリ」が自治体にとって大切な事業として位置づけられていたからです。地方自治体は、「スクラップ&ビルド」といわれる考え方で事業を絶え間なく進めています。つまり、一つの事業をやめる場合は、それに代わるより良い事業を構築することを原則としています。
ということは、多くの地方自治体が一斉に「ゆるキャラグランプリ」に代わる“より良い事業”に乗り出したことになります。
ゆるキャラが姿を消した背景に、“お役所の事情”が見え隠れしています。
ゆるキャラを消した国の「地方創生」
2014年秋、安倍首相が「地方創生」を宣言したことを受け、16年度から地方自治体の“先駆的な事業”に対して、毎年総額2000億円もの「地方創生推進交付金」が交付されるようになりました。
当然、地方自治体はその交付を受けるために“先駆的な事業”をつくろうと躍起になりました。その代表的な例が、16年度あたりから次々と発表されたユニークな「地方PR動画」です。地方自治体は、“先駆的”な動画をつくり、「再生回数」という明確な数字でその効果を国に示そうとしたのです。
温泉でアーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)を行う大分県のPR動画「シンフロ」、二度見したくなると評判だった宮崎県小林市の「ンダモシタン小林」、100万回再生を達成したら実現すると公言した大分県別府市の「湯~園地計画」など、話題の動画が次々に生まれました。
注目を集めたいとばかりに、過激な演出も相次ぎ、「不謹慎」「やりすぎ」といった批判を招いた自治体もありました。
こうしたPR動画と比べると、「ゆるキャラ」はもはや“先駆的な事業”ではありません。自治体によっては、「ゆるキャラではPR効果が分かりづらい」「税金を使って着ぐるみなんて作るな」「着ぐるみがどんどん汚くなっている」といった声もあったそうです。ゆるキャラが全国で群雄割拠する中で、「もはや、名前すら覚えてもらえない」と早々に白旗を上げる自治体もありました。
「地方活性化の救世主」ともてはやされたのに、地方創生の大波にさらわれるかのように、その多くがスポットライトを浴びぬまま消えようとしています。
可哀想なゆるキャラたち。なんとか生き残る術はないものでしょうか。「ゆるキャラ」ブームを振り返りながら考えてみました。