夏休み明け「死にたい」子どもを自殺から救うには

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家族に生じやすい誤解

(画像はイメージ)
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 学校での人間関係などのほか、児童期の自殺の主な原因と考えられているのは、「学業」や「家庭」の問題です。

 子どものSOSに気づくべき身近な家族が、原因の一つになってしまっている場合もあります。

 「親はぜんぜん分かってくれない」

 「お父さんに嫌われている」

 こんなふうに、親や家族の悩みを訴える子どももいます。しかし、家族の問題は非常にやっかいで、思い込みや誤解を引きずっているということもあります。

 「死にたい」と訴える男子中学生がいました。家族全員を呼んでカウンセリングを行ってみると、両親が不仲で離婚のトラブルを抱えていました。

 男子生徒は、無口で何も話してくれない父親に不満を抱え、「お父さんがダメで、役立たずでウンザリ」という状態でした。しかし、この父親に話を聞けば、息子への愛情は深く、温かい眼差(まなざ)しを向けていることが分かりました。

 つまり、親子のコミュニケーションに食い違いがあり、家族に誤解が生じていたのです。実は、こうしたケースは珍しくありません。

自殺予防は一年中要注意

 子どもの自殺を防ぐには、まず、SOSのサインをつかむことです。ちょっとした異変や表情の変化に気づく必要があります。

 しかし、最近では、生活に余裕がなく、そもそも子どもたちの普段の姿を把握できていないという親や教師も少なくありません。

 経済的に大変なやりくりをしている家庭、夫婦共働き、シングルファザー・マザーといった世帯も増えています。雑務に追われる教師の多忙化も問題になっています。こうした状況の中で、大人たちは余裕がありません。このような社会のひずみが、子どもたちの自殺という問題に表れている可能性もあります。

 「9月1日問題」や「夏休み明け自殺」について知ることで、絶望の淵にいる子どもたちの存在を知り、注意を払うきっかけにすることは大切です。

 ただ、自殺のリスクを抱える子どもたちは、それぞれ個別の悩みやストレスを抱えています。必ずしも、「新学期だから」とか「新年度だから」というだけではありません。それぞれの子どもの命を守るには、一年中いつだって注意が必要なはずです。そのために、家族や教師は、子どもたちともっとコミュニケーションをとることが求められます。

 10代の子どもたちは今後、育ち、成長し、大人になります。たとえ、今がつらくても、「無理をしなくてもいい」「やりすごそう」と伝えることは、彼らを未来につなげることになります。

 私からも子どもたちに、伝えたいことがあります。どうか、自らの命を絶って、可能性の道を閉ざすことは避けてほしいと思います。


プロフィル
太刀川 弘和(たちかわ・ひろかず)
 筑波大医学医療系精神医学准教授。日本自殺予防学会理事。1993年、筑波大医学部卒業。2000年、同大大学院修了、医学博士。筑波大附属病院、茨城県立友部病院救急部長などを経て現職。自殺予防の研究活動のほか、災害精神医療、地域精神医療、精神科救急など精神保健福祉に関わる研究を行っている。

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