ブロッキングありき?海賊版サイト巡る議論に不満続出

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被害額4000億円?

 事務局提出のデータを巡っては、海賊版3サイトによる被害額「4000億円」についても妥当かどうか議論になっている。政府が4月にブロッキングを「適当」とする見解を出した際、被害の深刻さを裏付けるデータとして引用したものだが、漫画市場が年4500億円程度で推移していることを考えれば非現実的な数字だ。

 これは権利者団体「コンテンツ海外流通促進機構」が、漫画村のサイトへの推定アクセス件数に、正規の単行本や雑誌の平均単価をかけあわせて算出したものだった。ただ、文化庁によれば、著作権法で規定している損害額の推定は、侵害品の販売数に、正規品の販売価格から印刷代や諸経費などを引いた「利益」を掛け合わせる方法が一般的だという。実害とはかけ離れた数字であっても、検討会などに提示されれば、それが議論のベースになることは避けられない。

知的財産と精神的自由…公平な議論を

 検討会を傍聴していて、森田朗氏の著書「会議の政治学」を思い出した。審議会の座長などを歴任した行政学者の森田氏が、自らの体験をもとに、審議会を巡る駆け引きやテクニックのあれこれを書き記したものだ。

 中でも、審議会が事務局の意向を通すための「隠れ(みの)」と化しているとの指摘が印象的だった。「隠れ蓑」が機能するためには、委員や事務局の「顔」を立て、空気を読む、一種の「作法」が重要だ。冒頭で紹介した総務省の課長の発言は、まさにこの「作法」を外れ、事務局の意向に逆らうものだったのだ。

 しかし、ブロッキングを巡る議論は、インターネット時代において「知的財産の保護」と「精神的自由」という二つの対立する価値をどう調和させるかという重要な問題をはらんでおり、法律論や技術論を超えて、社会のあるべき姿から見つめ直す必要がある。

 事務局の議事進行に「ブロッキングありき」との疑いがもたれれば、賛成派と反対派の対立はさらにこじれ、議論は停滞するだろう。

プロフィル
若江 雅子( わかえ・まさこ
 読売新聞編集委員。北海道支社、社会部などを経て現職。サイバーセキュリティやネット関連の事件取材などを数多く手がける。

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39542 0 深読み 2018/09/03 18:30:00 2018/09/03 18:30:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180903-OYT8I50049-T.jpg?type=thumbnail

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