米朝交渉難航の中、金正恩氏が余裕なワケ

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険しい非核化への道のり

北朝鮮の建国70年を祝って平壌の金日成広場で行われた記念行事で、たいまつを掲げ、行進する人たち(10日撮影)=AP
北朝鮮の建国70年を祝って平壌の金日成広場で行われた記念行事で、たいまつを掲げ、行進する人たち(10日撮影)=AP

――今月後半には南北首脳会談が行われる。非核化問題で進展は期待できるか。

 「期待できない。9月9日付の労働新聞が2面に載せた『偉大な人民の国、我が共和国の前には勝利と栄光だけがあるだろう』という社説を読めばわかる。

 社説では『我々は平和繁栄の〝万年の宝剣〟(この言葉は、北朝鮮では伝統的に核兵器を指すものとして使われている)を手にした』『最強の戦争抑制力を持つことができた』『これは民族史的な大勝利であり、いかなる大国も我々を無視できず、尊重するようになった』と核兵器保有を誇示するとともに、『我が国は政治・軍事強国として世界舞台に堂々と立つことができた』と書かれている。

 つまり、核大国であることを今一度、強調したということに他ならない。この社説から明らかなように、北朝鮮はすでに持っている核を捨てるつもりはない。米国の態度を見ながら、ゆっくり軍縮会談のような形に持ち込むつもりなのではないか。

 金正恩氏は、韓国の特使団に対して、米国が先に終戦宣言に署名してくれるなら『より積極的な措置をとる』と言っている。韓国も、年内の終戦宣言実現に向けて、外交力を総動員している。

 しかし、今の段階で終戦宣言をすれば、米国や国際社会が求める非核化は遠のくばかりだ。終戦宣言をすれば、北朝鮮はさらに要求をつり上げるだろう。戦争が終わったのだから、米国は朝鮮半島に居座る必要はないと言い出すはずだ。

 それより厄介なのは、韓国国内で米軍不必要論が浮上し、米軍を追い出そうという運動が勢いづくことだ。今の文政権下では本当に米軍を追い出すつもりでいるかもしれない。今回の南北首脳会談は、むしろ、それが心配だ。

 もう一点、米国や国際社会は、非核化なしの北朝鮮への支援、経済交流は、問題解決を難しくするという認識だが、韓国はそうは思っていない。経済交流を活性化し、信頼を醸成していけば、北朝鮮は非核化により積極的になると考えている。これは幻想にすぎない。

 それでも文大統領は、非核化よりは経済交流活性化、投資拡大、板門店宣言で約束した鉄道、道路といったインフラ整備、と前のめりになっている。

 文大統領の北朝鮮訪問で、金正恩氏から非核化に関してより踏み込んだ発言を引き出すことができなければ、一気に昨年末のような緊張状態に逆戻りする可能性も否定できない」

首脳会談提案、“正面突破”を画策か

――金正恩氏が米朝首脳会談を提案した。それには、どんな意図があるのか。

 「まず、実現までは不確定要素が多すぎて、難しいのではないかと思う。北朝鮮は韓国といろいろなことをやろうとしても、中国から援助をもらい、制裁緩和を働きかけてもらおうと思っても、米国が態度を変えない限り何もできないことをしみじみと感じている。

 米国との間で何らかの打開策を講じなければならないことがわかっていて、そのためにはトップ同士の会談、トランプ大統領と会うしかないという認識の下で、首脳会談を提案したのだと思う。

 しかし、それが実るには、18日から訪朝する韓国の文大統領が、先に韓国の特使団が引き出した非核化に関する言及以上に踏み込んだ内容のものを取り付けられるかどうかがカギを握る。

 ただ、今のところ北朝鮮は、米国が終戦宣言をしてくれたら、米国が求めている『核リスト』の提出に応じてもよいという立場だ。『核リスト』を提出することも、いくつかの段階に分けてやろうとしている。

 米国はそうした北朝鮮のやり方に嫌気がさしているのだが、トランプ大統領は政治的な思惑もあって、会談に前向きの印象を受ける」

プロフィル
李 相哲(り・そうてつ)
 龍谷大学社会学部教授。1959年、中国・黒竜江省生まれ。北京中央民族大学卒業後、中国の日刊紙記者を経て87年に来日。95年、上智大学大学院文学研究科新聞学専攻で博士号(新聞学)取得。同大学国際関係研究所客員研究員などを経て98年、龍谷大学社会学部助教授。2005年より現職。主な著書に『朴槿恵<パク・クネ>の挑戦 ―ムクゲの花が咲くとき』(中央公論新社)、『金正日秘録 なぜ正恩体制は崩壊しないのか』(産経新聞出版)などがある。

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40517 0 深読み 2018/09/11 12:36:00 2018/09/11 12:36:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180911-OYT8I50017-T.jpg?type=thumbnail

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