前代未聞、ブロッキング法制化巡り委員の半数が反対

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「9人の反対重い」…同調する賛成派も

19日の海賊版サイト対策検討会。意見の取りまとめができぬまま会期延長となった
19日の海賊版サイト対策検討会。意見の取りまとめができぬまま会期延長となった

 口火を切ったのは森委員だった。法律の憲法適合性を判定する違憲審査基準には、(1)具体的・実質的な立法事実に裏付けられ、(2)重要な公共的利益の達成を目的として、(3)目的達成手段が実質的に合理的な関連性を有し、(4)他に実効的な手段が存在しないか事実上困難な場合に限られる――との4つの基準があるが、森委員は「少なくとも(1)と(4)を満たしていない」として違憲の疑いが強いと主張した。

 (1)の立法事実とは、どうしてその法律が必要なのか、法律を作るための根拠となる事実のことだが、これまでの議論の中で事務局が提示した事実関係に様々な疑義が指摘され、これに対し事務局は明確に回答できないでいる。例えば、海賊版1サイトによって生じた被害推定額「3000億円」は、算定方法が誤っているとの指摘があり、政府の素案では当初、「数十億円」などと記載されていたことも判明。事務局が紹介した海外のブロッキング制度導入実績についても疑問が呈されている。

 (4)についても、森委員は「この検討会で新たに提案された様々な対策について、試みてもいない段階では『他の手段が存在しない』と言えない」として、「違憲の疑いが払拭されるまで、具体的な法制度の検討に進むべきではない」と主張した。

 これを引き取る形で、憲法学者の宍戸委員が「現状では憲法違反でないとすることには疑問がある」と断じると、これまでブロッキング法制に賛成していた法律家の意見も動き始めた。

 著作権法が専門の早稲田大学教授、上野達弘委員は「9人による反対意見は重い」とした上で、「内容次第で憲法違反にあたることには異論がない。いくら立法しても、裁判所で違憲と判断される可能性がある」と反対派に同調。さらに「事務局としては、4月の緊急対策に『次期通常国会で法制化を目指す』と盛り込まれた事情があるかもしれないが、ここには『関係者の理解を得つつ』という文言も入っていた」として、時期を区切らずに法律家を中心として憲法上の問題を議論する新たな検討会の設置を提案した。

 弁護士の福井健策委員も妥協点を探り始めた。「他の手段の実効性を検証する必要があることは疑いがない」として、検証するまで法制化を見合わせるべきとの反対派委員の要望にも「工夫次第で合意できるのではないか」と理解を示した。その上で、他の手段の実効性を検証するためにも、様々な利害関係者を入れた海賊版サイト対策のための協議体の設置を急ぐべきだと訴えた。

総務省が修正要求、割れる政府見解

 政府内も割れ始めた。事務局作成の中間まとめ案は現在、関係省庁で協議されているが、その中で総務省から「ブロッキングではなく、フィルタリングの普及促進やアクセス警告方式を採用すべきだ」との修正の要求が出ているのだ。

 ブロッキングは、利用者の同意がないまま、全ての通信先を監視した上で、特定の通信を遮断するが、総務省の主張する2案は、同意の取得が前提となっており、通信の秘密の問題をクリアできるというのがポイントだ。

 フィルタリングは有害サイトの閲覧を制限する機能で、現在、青少年インターネット環境整備法では携帯電話事業者に対して18歳未満が利用する場合にフィルタリング機能を説明するよう義務づけている。これを著作権侵害サイトの閲覧防止にも活用すべきという提案だ。

 アクセス警告方式は、今回の検討会で新たに提案された手法で、まず利用者に約款による包括同意をとり、その同意を根拠として通信先を監視し、海賊版サイトにアクセスしようとした場合は端末画面に警告を表示するというものだ。いったん同意しても、設定変更によって同意を撤回できるようにすることも条件となる。電気通信事業法の解釈では、約款による包括同意では通信の秘密を侵害することは認められないとされてきたが、サイバー攻撃への対処方法としては、総務省の有識者会議が検討の末、2013年度からマルウェア配布サイトなどを対象に実証実験を行ってきた経緯がある。今回の提案は、これを海賊版サイトにも拡大するというものだ。

 総務省はこの方式をとるにあたり、まず著作権法の改正により、現在、動画や音楽で導入されている著作権侵害コンテンツのダウンロード違法化を漫画などの静止画にも拡大することを求めている。海賊版サイトで漫画をダウンロードするユーザーの行為が違法とされれば、通信を監視する行為に、ユーザーにその違法行為を止めさせるという理由がたつからだ。

 実は、ダウンロード違法化の先行には、もう一つの狙いがある。「アクセス制限を取り得る対象を、違法行為につながる閲覧に限定しておけば、名誉毀損(きそん)やプライバシー侵害など著作権以外の権利侵害に拡大させずに済む」(総務省幹部)というのだ。

 この2案については、ブロッキング賛成派の委員から「同意を前提にしたら利用者は使わない。強制的に遮断できるブロッキングの方が効果的だ」との異論が出ている。また、ダウンロード違法化については、10年施行の改正著作権法で音楽や動画で導入された際や、その後の刑事罰化の際に「事情を分からない人が1クリックで犯罪者になる恐れがある」との批判が上がり、現在も静止画への拡大に反対意見は多い。ただ、「ブロッキング法制化に『違憲の疑い』が濃厚となり、反対意見が強まっている中、2案は有効な折衷案となるのではないか」と総務省幹部はみる。

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41615 0 深読み 2018/09/20 17:45:00 2018/09/20 17:45:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180920-OYT8I50033-T.jpg?type=thumbnail

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