今や“泳ぐ宝石”…過熱するメダカブームのウラ

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地域が育む野生メダカの性質

水族園内に展示されている「東京めだか」の水槽の前で保全活動について説明する多田さん
水族園内に展示されている「東京めだか」の水槽の前で保全活動について説明する多田さん

 葛西臨海水族園でメダカの飼育展示係を務める多田諭さん(57)によると、メダカが持つ地域ごとの特徴は、長い歴史の中でその地域の環境に順応してきた証しでもあり、地域固有の遺伝子型はいわばメダカたちの「履歴書」だ。他地域のメダカと交雑させてしまう行為は、「この『履歴書』をないがしろにするだけでなく、生息そのものを困難にする事態にもつながりかねない」と多田さんは言う。

 北方に分布するメダカは、南方のメダカよりも一般に成長が早いという性質を持つ。これは春が遅く、冬が早い環境に適応し、早く大きくなって体力を蓄えて冬を越すためだ。異なる地域のメダカと交配し、この性質がなくなってしまえば、その地域の気温に対応できず、絶滅する可能性も出てくる。

 観賞する分には美しく映るヒメダカの色も、自然環境では目立ちすぎて捕食されやすくなる。遺伝的攪乱が野生のメダカに与える影響は計り知れないのだ。多田さんは「他地域のメダカや品種改良されたメダカを放流するのは、たとえ善意であっても、その地域の野生のメダカに悪い影響を与えかねないのです」と警告する。

いつかは里帰りを

 生粋の江戸っ子とも言える「東京めだか」は、今も都内のどこかの水辺でひっそりと生き続けているのだろうか。多田さんは、年間数件寄せられる情報などを基に調査に向かうが、あまり期待を持たずに出かけるという。「自然の中にもまだいると信じたいが、可能性はかなり低い」と知っているからだ。2006年から始まった都内のメダカの生息地調査は今年で計35か所に及ぶが、メダカが見つかっても「江戸っ子」ではないと判明することが繰り返されてきた。

 現在、葛西臨海水族園などで飼育が続く「東京めだか」は、現状では自然に戻すのは難しい。ただ、地域のメダカは元々の生息地にいることが本来の姿。多田さんは、「里帰りさせてあげたいという気持ちはずっとある」と話す。

 とはいえ、その願いが実現したとしても、「東京めだか」が自然の中で泳ぐ姿を私たちが見ることは難しそうだ。他の地域のメダカが移入してしまう可能性や、人間によって捕獲されてしまう危険性を考えれば、里帰りする水辺は人間の出入りが制限されるような場所となりそうだからだ。

 飼育や繁殖の面白さを教えてくれるメダカだが、飼うなら目の前の水槽の中だけでなく、自然の中の生き物にも思いを巡らせて「最後まで面倒を見る」という当たり前の覚悟が必要ではないだろうか。

プロフィル
阿部 明霞( あべ・あきか
 2012年入社。盛岡支局を経て、17年から国際部で各国の在日大使館などを取材。18年9月からメディア局編集部記者。

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43541 0 深読み 2018/09/30 07:20:00 2019/01/31 20:21:27 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180928-OYT8I50050-T.jpg?type=thumbnail

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