揺らぐ「ブロッキング必須論」…注目の仮処分決定

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トライする前から諦めている?

紛糾した海賊版サイト対策検討会(9月19日)。今後の論点は…
紛糾した海賊版サイト対策検討会(9月19日)。今後の論点は…

 CDNのようにキャッシュサーバーなどでコンテンツを複製している事業者に対しては、さらに法的な手続きはとりやすくなる。

 著作権法上、アクセスを効率よく処理するためのキャッシュサーバーなどで行われているコンテンツの複製は、著作権(複製権)侵害の例外とされているが、著作権侵害にあたると知ったときは、権利制限が外れ、保存し続けると複製権を侵害した当事者として扱われる。つまり、権利者がきちんとCDN事業者に著作権侵害である旨を知らせさえすれば、それ以降、CDNサービスを続けることはCDN事業者による著作権侵害と認められるということだ。

 海賊版サイト対策検討会の委員の一人、丸橋透・明治大教授は、「クラウドフレアは既に米国では、著作権侵害の訴訟を受けてサービスを停止したり、和解したりしている。日本はさらに恵まれた法制度があるのに、なぜこれまで使わなかったのか。日本の権利者はトライする前から諦めているように見える」と苦言を呈する。

あらゆる手段を尽くしたのか

 ここで問題になってくるのは、今回の海賊版サイト対策で、本当に権利者側はあらゆる手段を尽くした上でブロッキング法制化を主張しているのか、という点だろう。

■ブロッキングと通信の秘密の関係
 ブロッキングとは、通信事業者がユーザーの同意を得ずに特定サイトに対するアクセスを遮断する行為。遮断のためには全ての通信についてアクセス先をチェックする必要があるため、全ユーザーの通信の秘密を侵害する。憲法では、通信の内容や宛先を第三者に知られたり、悪用されたり、漏らされたりしない「通信の秘密」の権利を保障しており、電気通信事業法は事業者に対して通信の秘密を侵してはならないと定め、厳しい罰則を設けている。

 私たち全てのユーザーのアクセス先を検知するブロッキングは、憲法の保障する「通信の秘密」を侵害する。インターネット上の知る権利や精神的自由に対する重大な制約になるため、その法制化の合憲性は慎重に判断される必要があり、以下のような4点の基準をすべて満たさなければ、違憲となる可能性が高いとされる。(1)具体的・実質的な立法事実に裏付けられ、(2)重要な公共的利益の達成を目的として、(3)目的達成手段が実質的に合理的な関連性を有し、(4)他に実効的な手段が存在しないか事実上困難な場合に限られる――の4点だが、CDNへの差し止めによって海賊版サイトの運営に壊滅的な打撃を与えることができるのだとすれば、(4)を満たしていないことは明らかだ。

 海賊版サイト検討会では、これまで、広告規制や検索結果表示の抑制、教育、フィルタリングの普及など既に様々な対策案が提唱されており、まだ試みてもいない段階では「他の手段が存在しない」とは言えず、違憲の疑いが払拭されていないと指摘されている。今回の仮処分命令は、こうした主張をさらに裏付けるものになるだろう。

プロフィル
若江 雅子( わかえ・まさこ
 読売新聞編集委員。北海道支社、社会部などを経て現職。サイバーセキュリティーやネット関連の事件取材などを数多く手がける。

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