ホテル経営はおいしい?相次ぐ異業種参入の理由

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異業種参入という“強み”

(画像はイメージ)
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 以前、遊休資産を持つクライアントから、こんな相談がありました。

 「将来、自社事業のマーケットが縮小することが見込まれる。成長が著しいホテル業界への参入戦略を考えたい」

 議論のポイントは、以下の2点のどちらに(かじ)をとるべきかということでした。

 〈1〉収益性が高く、かつ多店舗展開可能なビジネスホテル分野に参入すべきか

 〈2〉自社の特徴、強みを生かした個性的な(好き嫌いがはっきりする)コンセプトを重視したライフスタイル型のホテルを開発すべきか

 現状のマーケット環境や将来の見込みを分析した結果、次のような結論を示しました。

 「競争の激化が予想されるビジネスホテルに後発かつ自社ブランドで参入するよりも、今後需要の伸びる国内、海外レジャーゲストを対象にし、また会社の強みや経験が生かされ、かつ価格競争にさらされにくいコンセプト重視のホテルにすべき」

 クライアントは、ホテルへの新規参入について、運営面の懸念をなおも抱えていました。

 この点については、宴会部門や婚礼などを設けず、清掃などをアウトソースすれば、ホテルの運営は比較的コストをかけずに済むことを説明。ライフスタイル提案型のコンセプトホテルであれば、ホテル経験者などの人材をあえて採用しないという選択もある――。異業種参入という“強み”を生かした戦略を練ることができました。

異業種参入の「リスク」

ホテル コエトーキョー(東京都渋谷区)
ホテル コエトーキョー(東京都渋谷区)

 もちろん、異業種参入には課題やリスクもあります。

 チェーン展開せずに数室から20室程度の規模で、本業のPRなどを兼ねたショールームとしての位置づけの単独経営型のホテルであれば、話題性は大きい反面、参入企業にとって事業リスクは少なくて済むかもしれません。

 しかし、今後、ホテル部門として規模を追求し、グループの利益に貢献するというスタンスを取っていく場合には、現在多くのホテルチェーンが抱える同じ悩みを持つことになります。つまり、店舗が増えることによるブランド価値の低減リスク、模倣されるリスク、さらに集客や人材確保の課題などです。

 少ない部屋の在庫であれば、SNSやOTA(オンライン予約事業者)を通した予約で、比較的容易に部屋が埋まる可能性があります。ところが、チェーン展開などによる大規模化で取り扱う部屋数が多くなれば、集客のチャネルはより複雑かつ高度なものが求められます。

直予約を高めるための顧客基盤の確立、グローバルベースの集客ルートの構築、チェーンオペレーション体制の確立……。様々な課題が降りかかってきます。異業種による新規参入は、話題性が高く、メディアなどで華々しく報じられますが、一方で一時的な流行にとどまる危険性も内包しています。

 インバウンドという時代の追い風はあるものの、似たようなコンセプトのホテルの供給は増加し、競争は間違いなく激化します。また、世界レベルの経済危機や自然災害、テロ、政治問題など、ホテル業界はあらゆるリスクにさらされる可能性があります。

 その中で、いかに本気で取り組むか、また、いかにゲストの潜在的なニーズを読み解き続けられるか、それが勝負の分かれ道になってきます。

プロフィル
澤田 竜次( さわだ・りゅうじ
 PwCコンサルティング合同会社リアルエステート&ホスピタリティパートナー。1965年福岡県生まれ、名古屋育ち。1989年上智大学法学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。
 98年、米ワシントン大学でMBA取得。2000年4月にコンサルティンググループに入社。財務戦略担当リーダーとしてM&A戦略、企業再編・再生関連ビジネスに携わり、07年からホテルおよび不動産事業会社に対する戦略コンサルティング業務、ホテルの開発・売買時におけるアドバイザリー業務に従事。16年1月から現職。業界専門誌(月刊プロパティマネジメント、レジャー産業資料、週刊ホテルレストランなど)への寄稿および外部講師など多数。

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44311 0 深読み 2018/10/13 07:45:00 2018/10/13 07:45:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181011-OYT8I50037-T.jpg?type=thumbnail

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