西郷どんが「革命家」? 大河に違和感を抱く理由

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「維新の意義は?」日本史考えるきっかけに

 にもかかわらず、明治維新は日本を大きく変えた。勝者となった薩長土肥の士族が、版籍奉還や廃藩置県を通じて(ろく)と領土という自らの特権を手放し、「王政復古」の一方で「文明開化」という一見矛盾する改革を平和裏に進めたことが大きい。

 フランス革命では200万人の血が流れたが、戊辰戦争は3万人といわれる。それに続く改革はほとんど抵抗なく行われ、司馬遼太郎(1923~96)は「明治維新は世界でもまれな革命だった」(『「明治」という国家』)と書いている。

 これまでにも歴史学者はもちろん、多くの文化人が明治維新の意義を考察し、数え切れないほどの著作や論文を残している(別表)。戦前の「日本資本主義論争」でも維新の意義や、やり残した革命について大きな論争になり、この論争が戦後に共産党系と社会党左派などの非共産党系が分かれる背景のひとつとなった。

 新政府は旧幕臣も積極的に登用し、「万機公論で決する」仕組みは近代憲法、議会制導入へとつながった。一方、中央集権、官僚国家を土台とする政治体制は、制度疲労を起こしているようにもみえる。

 革命かどうかなどどうでもいいではないか、と思う人もいるだろうが、平成の終わりの年に維新150年を迎えた秋の夜長に、日本の歩みを振り返るのも悪くない。『日本史の論点』は巻末に、執筆陣が選ぶ各時代の必読書「日本史をつかむ百冊」もついている。中公新書が創刊された1962年に生まれた私の書棚にある中公新書は30点に満たないが、好きな歴史物を読み直し、知的な鉱脈を探したい。

「深層NEWS」に出演した辻田さん(左)と門松さん(右)(※中央は丸山編集委員)
「深層NEWS」に出演した辻田さん(左)と門松さん(右)(※中央は丸山編集委員)

 明治改元150年の日の「深層NEWS」では、尚美学園大講師で『明治維新と幕臣』(中公新書)の著書がある門松秀樹さんと、近現代史研究者の辻田真佐憲さんに、明治維新の意義について語ってもらった。

 門松さんは、江戸と明治には連続性があるとしたうえで、「明治国家の建設にあたっては、大久保(利通)の下で行政実務にあたった旧幕臣の官僚集団の役割が大きかった」と指摘した。王政「復古」を号令しながら文明「開化」を進めることができた理由については、王政復古の大号令の中にある「諸事神武(じんむ)創業ノ始ニ(もとづ)キ」という言葉にカギがあると解説した。朝廷はどの時代まで「復古」するか議論し、結局は史実の記録がない「神武の昔」に戻ることで、前例に縛られない政策を進めることができた、というのが門松さんの見方だ。

『明治維新と幕臣』(中公新書)
『明治維新と幕臣』(中公新書)

 辻田さんは、維新の立役者として明治天皇(1852~1912)に注目し、「政治的動きをしたわけではないが、長い間シンボルとして、時代に安定感を与えた」と評価した。また、「明治維新が作った官僚制度は、維新の元勲たちが去った後、誰がどのようにコントロールするかという命題を抱え続けている」と指摘した。

 歴史に興味を持つ人が増え、歴史の実証研究も進んでいるが、維新が目指した「万機公論」を進めるには、「『物語』と『研究』のギャップを埋める議論の土台をつくる必要」(辻田さん)があるのかも知れない。


プロフィル
丸山 淳一(まるやま・じゅんいち)
 読売新聞東京本社経済部、論説委員、経済部長などを経て、熊本県民テレビ報道局長から読売新聞編集委員・BS日テレ「深層NEWS」キャスターに。経済部では金融、通商、自動車業界などを担当。東日本大震災と熊本地震で災害報道の最前線も経験した。1962年5月生まれ。小学5年生で大河ドラマ「国盗り物語」で高橋英樹さん演じる織田信長を見て大好きになり、城や寺社、古戦場巡りや歴史書を読みあさり続けている。

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