「どうせなら最下位」自虐に走る茨城と名古屋
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自治体に好まれる「自虐PR」

自治体の「自虐PR」は2011年頃から全国に広がりました。
「うどんしかない」というイメージの脱却を狙った香川県は、自虐的に「うどん県」と名乗ることで県のPRを行いました。
島根県は「世界遺産があると言っても信じてもらえない」「新幹線がとまりません」などと書かれた「自虐カレンダー」を発売して話題になりました。
その後も、「おしい!広島県」「のびしろ日本一!いばらき県」「スタバはないけど、スナバはある!」(鳥取県)など、各自治体で自虐的なアプローチが続きました。
最近では、東京・練馬区も「練馬区独立70周年記念」で自虐PR動画を制作して注目を集めています。「練馬区は港区に勝てる気がしない」「23区なのにJRが通っていない」などとさげすみ、「でも練馬区にはいいモノがたくさんある」と地域愛を喚起しています。練馬区民にはすこぶる好評だそうです。
「私たちの街は日本一!」とは言えない

こうした自治体の自虐PRには、日本人に根付く「謙遜は美徳」とされる独特の精神文化が深く関係していると思われます。
農耕民族として、集団行動を重んじてきた日本人は自慢や抜け駆けを嫌い、謙遜や遠慮を高く評価してきました。選りすぐった贈り物でも相手には「つまらないものですが」と言って渡し、他人に褒められても「とんでもないことでございます」と否定します。
「出る杭は打たれる」と言われるように、自己PRに熱心な人はコミュニティーで浮いた存在になりかねません。悪目立ちすれば、いわゆる「村八分」にされてしまうリスクもあります。
コミュニティーを円満に保つためには、過剰な自己PRはご法度です。慎ましく謙遜する態度が不可欠なのです。「私たちの街はまだまだダメだから、一緒に頑張りましょうね」と遠慮がちに、地域愛を確かめ合い、結束力を高める方法が効果的なのです。
これを、「私たちの街は日本一だ!」と豪語していたらどうなるでしょう。保育所が少ない、交通弱者への支援が足りない、働ける場所をもっと増やして……、住民からこんな課題を次から次へと指摘され、「税金を使っているくせに、地域の課題を分かっていないじゃないか」と吊るし上げられるでしょう。住民の理解や協力が不可欠な地方自治の運営において、土台から崩れてしまいます。
一方で、国からは巨額な交付金を提示され「もっと地域をPRしろ」とプレッシャーをかけられます。議会からも「いいモノがたくさんあるはずなのにPRが下手」などの批判を浴びます。
その結果、自治体は、国と議会と地域住民のすべてに説明がつく「自虐PR」に走ってしまうのです。