保育園無償化は大丈夫?厳しい保育士不足の真相

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潜在保育士、6割が「就労意欲あり」でも……

写真はイメージです
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 17年の賃金構造基本統計調査によると、全産業平均の税金や社会保険料などを差し引く前の「現金給与額」(月額)は30万4300円なのに対し、保育士(保母・保父)の現金給与額は22万9900円となっている。

 小さな子供を預かり、1日面倒を見るという職務の責任の重さや、労働環境の過酷さなどを考慮すると、とても見合った額とは言えない。

 野村総合研究所が今年7~8月、保育士資格を持つ女性約7200人を対象に実施したアンケート調査でも、こうした問題点が浮かび上がった。アンケートに答えた人の67.1%は、現在は保育士として働いていない潜在保育士だった。

 そのうち1000人を対象とした追加調査では、「保育士としての就労(復帰)意欲がある」と回答したのは60.5%に上った。しかし、就労意欲のある潜在保育士たちが、「働く上で最も重視する」としたのは、やはり「金銭的報酬(賃金)」。35.1%と最も多かった。復職を望む場合も賃金の低さがネックの一つになっているようだ。

 政府は、17年12月に閣議決定した「新しい経済政策パッケージについて」の中で、「保育士の確保や他産業との賃金格差を踏まえた処遇改善に更に取り組むこととし、今年度の人事院勧告に伴う賃金引き上げに加え、19年4月からさらに1%(月3000円相当)の賃金引き上げを行う」としており、対策を打ってはいる。

 今後、賃金が魅力的な水準に上がれば、働く保育士の数が増え、長時間勤務の負担も解消されていく可能性があるのは確かだろう。

業界特有の人間関係も……

 一方、保育の世界にはお金では解決できない問題もあるという。

 筆者が関係者に取材したところ、保育園では、保育士に特有の人間関係のきしみが離職につながるケースもあるそうだ。「子どもが保育士の言うことを聞かない時にどう接するか」などの方針は、保育士ごとに方法論やこだわりがあり、それが関係悪化の要因になることもあるという。

 東京都の「都保育士実態調査報告書」(14年)によると、保育士が現在の職場に対して改善を希望する項目の上位に「職員間のコミュニケーション」が入っている。さらに、前出の野村総合研究所の追加調査でも、就労意欲のある潜在保育士の14.6%が「スタッフの人間関係がよい職場であること」を最も重視すると答えた。これは、金銭的報酬に次ぐ数字だ。

 業界に特化した人材課題解決などに取り組む「チームビルディングス」(東京)の中島昭聡代表らによると、保育方針の違いに加え、保育士同士の上下関係などが相まって、過度にストレスを感じやすい状態になってしまうという。

 同社は、保育士の心理的負担の軽減や、管理職と一般の保育士との関係改善に向けた研修を手掛けている。中島代表は「都内のある保育園では(年間)離職率が27.7%に上っていたが、研修を受けた年には、5.5%まで低下した」と話している。

「モンペ」の存在も……

 ささいなことで保育園にクレームをつけてくる保護者たち、いわゆる「モンスターペアレント」の存在も保育士への心理的負担になっているようだ。

 保育士の求人・転職サイト「保育士バンク!」が、登録している保育士475人(潜在保育士らも含む)に対し、「あなたはモンスターペアレントと思える保護者に出会ったことはありますか?」と尋ねたところ、52.6%が「YES」と回答した。子ども同士のケンカや、保育園や保育士の教育方針に過度に介入してくる親もかなりいるという。

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