増えるDV…なぜ妻や彼女を殴ってしまうのか?

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

暴力の基本型としてのDV

(画像はイメージ)
(画像はイメージ)

 「男女」「親子」「師弟」といった非対称な関係性は、ケアすること、相互に扶助すること、愛情や友情を育むこと、愛着を感じること、適切な対人関係を学ぶこと、教えを請いながら敬うこと、といった基本的な人間性をつくりだす。

 他人同士が共生を試みる基本的なかたちである恋人関係は、パートナーシップをつくりだす典型である。「対の関係」の出発点であり、親密な関係性となる二人関係・二者関係であり、社会のなかので人間関係をつくる基礎となる。

 子どもは、パートナーシップを両親(夫婦関係)を通して体験する。ただ、対等な関係ではないことが多い。社会の不公平なジェンダー関係は、家族の中にも表れる。子どもは日常的にそれを目の当たりにする。

 面前で体験するのは明確な暴力だけではなく、この微細な非対称性に根ざした関係性の結び方である。そこにはコントロールも含まれる。そのコントロールが、〈1〉強いられたものである場合、〈2〉不公平なかたちである場合、〈3〉同意のない強制である場合――、これらは「関係コントロール型暴力」の萌芽となっていく。

 関係コントロール型暴力であるDVは、家族のなかに遍在しているといえる。非対称の関係性が構造的に持つ不公正さを日常生活で表現するのがDVなのである。

脱暴力へ向かう学習機会の提供

 関係コントロール型暴力が家族の中で常態化していくと、暴力性の度合いが高まっていく。しかし、コントロール行動それ自体の暴力性は見えにくい。モラルハラスメント、いじめやいじり、ネグレクト、マインドコントロール、ねじれた被害と加害から成るこのような行動をいかにして問題として可視化できるか。

 DV、虐待、いじめ、体罰、ハラスメントなどの行動改善に向かう、問題からの離脱や回復へと当事者を内発的に動機づける仕組みが求められるようになってきた。

 脱暴力へ向かう学習のための機会提供が受講命令制度として諸外国では政策化されている。それらを扱う特別の裁判所もある(DV特別裁判所など)。「治療的司法(THERAPEUTIC JURISPRUDENCE)」という考え方も構築され、脱暴力の機会を提供する司法の役割もある。

 脱暴力支援を行う受け皿を「治療的コミュニティー」という。「治療」という言葉を使っているが、医療と同じ意味ではなく、心理―社会的な面を視野にいれた脱暴力の機会を提供する取り組みのことである。

 関係コントロール型暴力から離脱するための選択肢として、日本においても社会的に取り組みを開始すべきであろう。

プロフィル
中村 正( なかむら・ただし
 立命館大学大学院人間科学研究科教授。1958年生まれ。社会病理学・社会臨床論、臨床心理社会学が専門。暴力の加害者向けの脱暴力臨床実践を行っている。性犯罪、子ども虐待、ドメスティック・バイオレンス、体罰等の対人暴力の加害者対策について治療的司法の観点から研究し、社会実装を試みている。

1

2

3

4

5

無断転載禁止
52614 0 深読み 2018/12/04 05:55:00 2018/12/04 05:55:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181129-OYT8I50071-T.jpg?type=thumbnail

おすすめ記事

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ