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市民ランナーにも広がる愛用者

今年正月の箱根駅伝では、山区間以外の8人が「ズーム ヴェイパーフライ 4%」を履いた東洋大が往路を制し、総合2位に入った。大会全体で40人近い選手が同モデルを着用していたことで、前年は4位だったナイキのシューズの占有率がアシックスを抜いてトップに立った。10月の箱根駅伝予選会でも厚底シューズの着用がさらに増えた印象で、その人気は市民ランナーにも広がっている。
「ズーム ヴェイパーフライ 4%」は2万5920円(税込み)とランニングシューズとしては高額だが、それでも品薄状態が続いているのだ。発売日になるとショップに行列ができ、オンラインストアでは数分で完売してしまうほど。昨年夏から本格的な発売が始まったものの、履きたくても履けないランナーがたくさんいる。その理由はなぜか?
ナイキによると、「ズームXフォームの素材は通常のルートとは異なり、航空宇宙産業の分野から取り寄せているので、まず、大量生産に向いていない。それと、多くの工場で扱ってしまうと、情報防衛の問題もある。限られた工場で、ひとつひとつ丁寧に作っているので、どうしても数が限られてしまう」ということだ。
マーケティングの戦略上、出荷数をコントロールしている可能性もあるが、それでも今年9月上旬に発売された新モデル「ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット」(2万8080円、税込み)は生産量が増えたようで、市民ランナーの足元も飾るようになった。
履きこなすには時間が必要
本格登場以来、2年足らずの間に数々の栄光を勝ち取ってきた“魔法のシューズ”は、果たして万人に効果があるのだろうか。日本人ランナーでいち早く履いた大迫が「最初は慣れなかった」と話しているように、履きこなすには少し時間が必要なようだ。
大迫を指導するコーチのピート・ジュリアン氏も「従来のシューズと履いた感覚が違うし、爪先に重心をかけるような走りになる。スグルも慎重に(走りを)変えていくように心がけてきた」と話す。
駅伝メンバーのほぼ全員がナイキの厚底シューズを履いている東洋大は、シューズに合わせるかたちで、フィジカルを強化するようになった。カーボンファイバー製プレートをうまく屈曲させることができないと、推進力につながらないどころか、マイナスに作用してしまう可能性があるからだ。
酒井俊幸監督は「選手は履きたがるが、履きこなせない選手にはストップをかけている。姿勢やフォームを最後まで維持できるのか。それができれば、すごく革命的なシューズだと思う」と感じている。