「社内官僚がいない会社」が躍進する理由

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

「集団的知性」への絶対的信頼

写真はイメージ
写真はイメージ

 ティール組織では社員の自律性、主体性を極限まで引き上げる工夫がなされている。その一方で、(1)役職や肩書(2)組織図(3)職務記述書(ジョブディスクリプション=社員が担当する業務内容を明記したもの)(4)経営目標――は、いずれも存在しない。にもかかわらず、「エンゲージメント(従業員の経営陣への信頼度、経営陣が従業員の幸福にどの程度関心があるか等)」が高いなどの特徴がある。

時短のはずが…働き方改革、韓国の夢と現実

 上司と部下の区別がなく、役割も肩書も関係なく、社員一人ひとりが自律的かつ自主的に意思決定を行い、行動する。社員の評価は上司でなく同僚が行い、企業内のあらゆる情報を全社員に開示して共有する。

 「ゴアテックス」を開発したことで有名なW・L・ゴアは、社員の給与決定に同僚からの格付け方式を導入している。年に一度、社員たちは同僚全員についての評価を調査票に記入し、それを集計することで、何段階かの給与ベースにグループ分けする。普段、その人と接している複数の人間が評価プロセスに関われば、一人の人間(上司)のみで行うよりも、多面的で公平な評価となる可能性が高まるという考えに基づく。同社はこの方式を、すでに1950年代後半には取り入れていたという。

 日本のサラリーマンが驚愕(きょうがく)するような運営のスタイルをティール組織が有しているのは、集団的知性に絶対的な信頼を置いているからである。

 では、「集団的知性」とは何か。ラルーはその特徴を示すため、経営学者ゲイリー・ハメルの次のコメントを引き合いに出している。

・優れたアイデアをだれも握りつぶせない
・だれでも協力者になれる
・だれでもリーダー役を務められる
・誰も指図できない
・目的や目標は自分で決める
・だれかの成果を簡単に生かせる
・ゴロツキや暴君に耐える必要はない
・出る杭は打たれない
・優れたものがたいていは勝つ(平凡ではそうはいかない)
・情熱を削ぐような方針は覆される
・素晴らしい貢献は周囲から認められ、祝福される

 実は、これら11の事項はティール組織の話ではなく、ウェブのポジティブな特徴としてゲイリー・ハメルが掲げたものである。つまり、インターネット空間における理想的な組織的活動の論理を、企業組織として体現したのが「ティール組織」であるともいえるのだ。

日本の雇用は「稲作農耕型」

 日本は今、「働き方改革」がブームにも似た状況だ。しかし、政府主導によるこの動きは、ティールのような次世代型組織への移行を促すどころか、逆行する効果を持つのでは、と筆者は懸念している。世界でも独特と指摘されることが多い「日本人と仕事」の関係を正しく理解せぬまま、「変える」ことだけを目的に突き進んでいるように見えるからだ。

 「人に仕事をつける」のか、それとも「仕事に人をつける」のか。人が仕事内容に対応するのか、それとも、仕事に応じた能力を持つ人を選ぶのか――。日本の雇用システムは、「“人に仕事をつける”メンバーシップ型」とされ、「“仕事に人をつける”ジョブ型」が一般的な欧米のそれと対比されることが多い。メンバーシップ型の組織においてメンバーは、特定の目的を共有しつつも明確な役割分担はなく、フラットな関係で営まれる。いわば、農耕社会における「稲作農業」のイメージである。一方、ジョブ型組織は分業により明確に役割が定まっている工業社会における「工場労働」が原型といえる。

 

1

2

3

4

5

スクラップは会員限定です

使い方
「深読み」の最新記事一覧
52303 0 深読み 2018/12/05 07:00:00 2018/12/05 07:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181203-OYT8I50080-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)