ここまですごい!ノーベル賞・本庶さんの素顔

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「クラススイッチの解明」で文化勲章

 毎年10月にノーベル賞の受賞が決まると、政府が翌月、あわてて文化勲章を授与する。これまでに何度も繰り返されてきたドタバタだ。

 だが、本庶さんはノーベル賞の前に文化勲章を受けている(2013年)。本庶さん以外でも湯川秀樹、朝永振一郎、南部陽一郎、利根川進、小柴昌俊、野依良治、赤崎勇の計7人のノーベル賞受賞者が、先に文化勲章を受章しているから、本庶さんのケースがことのほか珍しいわけではない。

 それでも本庶さんが傑出していると思われるのは、文化勲章の「受章理由」だ。当時の政府発表資料を基にわかりやすく解説すると、本庶さんは次の四つの理由で文化勲章を受けることになった。

 この四つの中で、最も主要な研究業績として認められたものは、1番目の「クラススイッチの解明」にほかならない。

 文化勲章受章者の業績を紹介する特集で読売新聞は、読者に理解してもらいやすい説明として、「生物の体を守る免疫が、様々な異物(抗原)をどのように撃退するか、その仕組みの全容を明らかにし、分子免疫学の研究で先導的な役割を果たした」と記した(13年10月25日付朝刊)。

 異物に対抗する免疫成分の遺伝子が、自在に組み替わって対応していることは、米マサチューセッツ工科大教授の利根川進博士が発見し、1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。利根川さんの業績は、<一つの遺伝子は一つのたんぱく質しか作らない>という生命科学のセントラルドグマ(中心原理)を覆す大発見と高く評価され、ノーベル賞は単独受賞だった。

 一方、本庶さんが文化勲章を受けた業績は、IgAやIgEなどと呼ばれる種類(クラス)の違う抗体が生み出されるクラススイッチという「仕組みの解明」であり、ノーベル賞の利根川さんが積み残した抗体の多様性という謎を完全に解き明かすことだった。

「がん免疫療法の発見」でノーベル賞

今年のノーベル生理学・医学賞に決まり、京都大学で記者会見した本庶さん
今年のノーベル生理学・医学賞に決まり、京都大学で記者会見した本庶さん

 これだけでも世界に誇るべき偉業なのだが、本庶さんのノーベル賞受賞理由は、「クラススイッチの解明」ではなく、「免疫抑制の阻害によるがん療法の発見」だ(2018年10月2日付朝刊)。文化勲章の受章理由を再度たどってみると、4番目に当たる。本庶さんの発見(PD-1分子)に基づくがん治療薬「オプジーボ」が世に出るのは、文化勲章受章の約1年後のことだ。

 このように多数の研究成果を誇り、ノーベル賞と文化勲章の主たる受賞理由が別々なのは、本庶さんがおそらく初めてではないだろうか。

 iPS細胞で12年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所長が、本庶さんについて、「私たち医学者の目標であり、憧れの存在」「お目にかかると最敬礼します」と語っていたのは、こういう背景があるからなのだと納得する。

 

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52959 0 深読み 2018/12/10 10:15:00 2018/12/10 10:15:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181207-OYT8I50022-T.jpg?type=thumbnail

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