アホウドリ再生…孤島での“孤闘”が起こした奇跡

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ヒナの移住に米当局が協力

 それでも、まだ不安はあった。鳥島は火山島である。大規模な火山の噴火が繁殖期に起きると、繁殖地が壊滅する恐れもある。実際、02年に噴火があった。幸い被害はなかったが、その恐れが杞憂(きゆう)でないことが示された。

 はるか太平洋の東から、救いの手が差し伸べられた。米魚類野生生物局は、長谷川さんら鳥類研究者と協力して、安全な繁殖地となる島の選定に乗り出した。過去に繁殖地だった小笠原諸島の(むこ)島を選ぶと、08年2月、鳥島で生まれたヒナ10羽をヘリコプターで運び、移住させた。その後も移住が進み、14年にはヒナ1羽が初めて巣立った。長谷川さんによると、これまで5羽のヒナが巣立ち、1羽が聟島に戻ってきているという。

 中国と政治問題になっている尖閣諸島にも、アホウドリのコロニーがある。人が立ち入れないことから、生息数は増加しているとみられる。長谷川さんは、現在、尖閣諸島の北小島と南小島に計約200のつがいが生息し、総数で約1000羽の集団になっていると推定する。

 増加したアホウドリは、非繁殖期には北太平洋で観察されることが多くなった。長谷川さんは、あと8年で鳥島の集団が1万羽を超えると予想する。

 たった一人で始めた挑戦は、年を重ねるごとに支援者や理解者を増やし、日本だけでなく米国なども巻き込み、広がっていった。「今後、日本列島周辺でも、アホウドリを見られる機会が増える」。長谷川さんはそう断言し、笑った。

 人間の手によって絶滅の淵に追いやられた海鳥は、一人の人間が始めた活動によってよみがえった。長谷川さんの活動を振り返ると、心が温かくなり、こう思う。

 アホウドリは、もう哀しくない。

プロフィル
三島 勇(みしま・いさむ)
 早稲田大学卒業後、読売新聞社入社。社会部、科学部などで司法、原子力、環境問題などを担当。1999年3~4月、鳥島に渡り取材。著書に「日本の原子力施設全データ」(共著)など。

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