スマホから情報が…海外IT企業を規制できるか?
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スマートフォンの位置情報は、その人の生活や内面を映すプライバシーの塊だ。その動きを追跡すれば、自宅や勤務先が分かるだけでなく、訪問先によっては健康状態や政治的関心まで推測できてしまう。だが、これらの多くは、個人情報保護法では保護しきれず、電気通信事業者に対するガイドラインでかろうじて守られてきた。いま、日本の電気通信事業法の及ばない海外事業者と、日本の事業者に適用されるルールの「格差」が問題になっている。
スマホの位置情報で個人を特定?

「スマホの位置情報を大量に分析すれば、持ち主が誰か分かってしまう危険がある」。
電気通信大の吉浦裕教授は、研究結果を示しながらこう警告する。
吉浦教授らは昨年、被験者53人の同意の下、Wi-Fiのアクセスポイントで集めたスマホ53台分の位置情報3か月分を、利用者を分からなくした状態で入手した。
同時に、この53人が匿名で利用しているツイッターの投稿を集めて分析した。「いま新宿」「京都に行きたい」などといった地名を含むつぶやきは、一人一日平均0.48回しか投稿されなかったにもかかわらず、位置情報とつぶやきから機械学習ソフトウェアで傾向を分析すると、被験者の6割近い30人で匿名のアカウントとスマホを特定することに成功したのである。
被験者のアカウントを不特定の1万アカウントの中に混ぜても、35人分の候補を100アカウントまで絞り込むことができた。吉浦教授は「100程度なら人間の目で詳細にチェックできるので特定は容易になる」と話す。
さらに吉浦教授らは今年、ツイッターの匿名アカウントの投稿から個人を特定する実験も行った。78人の被験者に履歴書を提出してもらい、この78人を含む10万人分の匿名の投稿を集めて分析した結果、78人のうち39人が特定された。

両実験の結果をあわせれば、スマホの移動履歴→ツイッターの匿名アカウント→個人、の手順で、誰のものか分からないスマホの移動履歴から、特定の個人を割り出せる可能性がある、ということになる。