認知症の80歳がCDデビュー、英国で起きた奇跡

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家族による介護を選択

生まれたばかりのサイモン(1976年撮影)
生まれたばかりのサイモン(1976年撮影)

 テッドは2013年、アルツハイマー型認知症と診断された。サイモンは帰国し、母親を助けた。症状が進み、だんだん手に負えなくなるテッド。施設に預けるという選択肢もあったはずだが、できる限り家族で介護することにした。

 「子どもの頃、家族で2週間、休暇に出かけている間、飼い犬を施設で預かってもらったことがあります。家に戻った時、施設のオーナーに言われました。『お宅の犬はエサを食べず、ずっと悲しそうに鳴いていました』と。

 犬は、自分が捨てられたと感じたのです。父もこれと全く同じことを感じるだろうと思いました。認知症で暴力を振るうようになっていましたが、私の父であり、母の夫であることに変わりはありません。病気を理由に、見捨てることはできません。

 もちろん、私たちにも『もうやっていけない。解決には父を介護施設に入所させるしかないのかもしれない』と感じた苦しい日々がありました。

 それでも、母の強さのおかげで、父が今も家にいることをうれしく思います。一方で、私たちも気付いています。いつか、本当に家族の手に負えなくなり、父がホームに入る日が来るということを。私はその日を恐れています」

真夜中の恐怖体験

(左から)リンダ、エレンおばさん、テッドとサイモン。リトルブラックプールにて(1983年)
(左から)リンダ、エレンおばさん、テッドとサイモン。リトルブラックプールにて(1983年)

 テッドの症状は刻々と悪化していった。家族の苦労は並大抵ではない。

 「父が母にどんなことをしたか、見ていると悲しくなりました。父は女性を殴るような人ではありませんでしたが、とても攻撃的になりました。母に襲いかかってやるという考えで頭がいっぱいになり、彼女を押しながら部屋の中をぐるぐる回ったり、突然、彼女の髪の毛をつかんで引きずったりしました。それは恐怖の時間でした。

 私にとって一番、忘れられないのは、2015年にみんなで休暇に出かけた時のことです。父が家で暴れるので、父を連れてどこかに出かけようと考え、何日かの間、外国で過ごそうと思ったのです。それは悪夢でした。

 ある晩、父があまりにも大暴れするので、私は居間で寝ることにしました。母は父を避けて私の部屋で寝ていました。

 私はなかなか寝付けませんでした。すると真夜中に父が居間に押し入ってきたのです。父がちょうど私を見下ろす位置に立っている間、私は寝たふりをしていました。父が顔を近づけ、私の顔に触れそうになった時、ののしりや脅しの言葉をブツブツつぶやく声が聞こえてきて、やがてゆっくりと自分の部屋に戻って行ったのです。

 私は恐怖におののき、動くこともできず、ぎゅっと目を閉じて、じっとしているしかありませんでした。父のそんな姿を見るのは恐ろしく、まるで悪魔にとりつかれたようでした」

 

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177603 0 深読み 2019/01/22 12:22:00 2019/01/22 12:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190122-OYT8I50009-T.jpg?type=thumbnail

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