認知症の80歳がCDデビュー、英国で起きた奇跡

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介護の経験もまた「人生の一部」

レコーディング中にテッド(左)をいじるサイモン(c) Decca Records
レコーディング中にテッド(左)をいじるサイモン(c) Decca Records

 親の介護はある日突然、降りかかってくる。サイモンのように、心の準備もないままに巻き込まれる人も多い。サイモンは自らの介護体験を通して何を感じているのだろうか。

 「一人一人で置かれている状況は違いますが、大切なことは一人で苦しまないこと。あなたの経験してきたことを理解できる人、つまり、あなたと同じ状況にいたことがある人と話をすることです。

 私たちはかつて本当にひどい日を体験しました。もううんざり、疲れたと思った時、父を避けて2階に上がり、フェイスブックをチェックしました。

 最初に受け取ったメッセージは米国に住む女性からでした。そこには『天はそれに打ち勝つ能力のある人にしか試練を与えない。あなたはそのうちの一人です』と書かれていました。もし、みなさんに覚えておいてほしいことがあるとすれば、それはこの言葉です。

 1日を乗り切るのにどれだけの精神力が必要か、同じような経験をしたことがない人に説明するのは難しいことです。服を着替えさせる、顔を洗ってあげるといった単純なケアが、山に登るのと同じくらい困難な作業になることがあります。時にはそれで何時間も浪費することもあるほどです。

 また、ソーシャル・メディアなどを通じて、素敵な家、休暇、素晴らしい社会生活といった他人の『理想的な』生活がいやでも目に入ってきます。そんな時、あなたは自分が置いていかれたように感じるでしょう。もし、あなたが誰かのケアで家から外に出られないのなら、気分が滅入(めい)ることもあるかもしれません。

 しかし、それもまた人生の一部であり、他の全てのことと同様、1日で状況が変わることもあります。あなたが今、置かれた状況を受け入れることができるかどうかの問題なのです」

父親の人生を通じて自分を知る

テッドのCDデビューを伝える英国の新聞(c)The Times/News Licensing
テッドのCDデビューを伝える英国の新聞(c)The Times/News Licensing

 テッドのことを本にまとめた経験は、サイモンにとっても大きな意味があったようだ。

 「父のイメージが変わったとは思いません。父がどんな人か、あらためて思い起こしたのだと思います。私たちは何年もの間、認知症のために攻撃的になり、時にそれが暴力となって爆発する父との日々を過ごしてきました。あまりに多くのことが起きたので、病気になる前、父はどんな人だったかを忘れていたのです。

 古くからの父の友人に話を聞くと、友人や家族のためにどんなことでもする誠実で優しい男だったと、語ってくれました。それによって私は、病気で人格が変わる前の父がどんな人間だったかを思い出したのです。

 男にとって、父親は最も大きな影響を与える存在です。父がどんな人間だったかを知ることで、私は強さも弱さも含めて自分が何者かがわかったのです。このような機会を持つことができたのは、信じられないほどの幸運でした」

 

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177603 0 深読み 2019/01/22 12:22:00 2019/01/22 12:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190122-OYT8I50009-T.jpg?type=thumbnail

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