日産は「ゴーン式経営」から卒業できるか?

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それでも「規模の経済」は必要だ

 ゴーン被告が「規模の経済」を追い求め、将来有望な傘下企業を売却したことが不安材料になっていることはすでに指摘した。しかしながら、彼の戦略が100%間違っていたとは言えない。規模の経済は今でも当然、コスト面では強みにもなるからだ。

記者会見する日産の西川(さいかわ)広人社長。「ゴーン式経営」から脱却できるか(1月、横浜市内で)
記者会見する日産の西川(さいかわ)広人社長。「ゴーン式経営」から脱却できるか(1月、横浜市内で)

 ルノーと日産は2014年に部品の購買や研究開発、生産技術など、四つの機能の統合を行っている。その後、三菱自が連合に加わり、18年4月には、研究開発、購買など企業の運営に必要な領域を九つに分け、分野ごとに3社を統括するリーダーを置くなどし、3社で「規格化」した製品を量産化し、コスト削減に取り組んでいる。

 ゴーン被告がCEOだった頃から進められていたこの対応は、今も確実に効果を示している。しかし、3社連合を全て解消してしまうと、規模の経済が全く働かなくなる。当然、部品調達など様々なコストが膨らんで、日産や三菱、ルノーのいずれにとっても、競争力低下の原因になりかねない。

 この点で日産は、「ゴーン時代」に続き、ルノー、三菱自との3社連合体制を維持・強化していくことも重要だ。

 ある一定の期間は、3社が対等な立場に立ってモノを言える合議制を構築しつつ、3社連合による意思決定のスピードを高めることについて、早々に合意すべきだ。

 経営陣の強い結束を保ちつつ、各社が自主性と戦略を維持しながら、相乗効果で成長のスピードを上げるという本来の3社連合の趣旨を、3社の経営陣が固く約束すべきである。さらに、3社の動きを日仏両国の政府が支持すれば、より安定性が高まるだろう。

日産は“ルノー子会社”の座に甘んじる?

 ところで、ルノーは現在、43.4%の日産株を保有している。ルノーの利益の半分程度は日産株の配当金だ。一方、日産もルノー株を15%ではあるが保有している。しかし、フランスの商法では、相互出資で相手企業に40%以上の株式を保有されている会社は、相手の議決権を持つことができない規定になっている。そして現在、仏政府がルノーと日産の経営統合案を提示するなど、両社の主導権争いは激しくなっている。

 日産は資本関係で見れば、現時点でも実質的にルノーの子会社のような形になっているといっても過言ではない。だが、売上高や生産規模ではルノーを大きく上回っているため、ルノーとの提携関係を対等にすべく資本関係の見直しを進めたいと強く望んでいるようだ。

 ルノーやフランス政府が、3社を統合させたがっているという報道が出た後に、逆に日産への出資比率を減らしてもいい、と考えていると伝えられるなど、情報は錯そう気味だ。しかし、実のところフランス政府としては、現在の資本関係も維持したいというのが本音だろう。日産にとっては資本関係を現状のままにしたとしても、3社連合体制の維持、強化を優先するのが得策ではないだろうか。

 そうこうしている間にも、自動車業界は刻一刻と歩みを進めている。日産はゴーン時代の経営をいったん見直し、時代にあった経営体制を構築すべき時期にさしかかっている。

 

プロフィル
中村 吉明(なかむら・よしあき)
 1987年、早稲田大学大学院修了、通商産業省(現・経済産業省)入省。環境指導室長、立地環境整備課長、産業技術総合研究所企画副本部長などを経て、現職。米スタンフォード大大学院修士課程、東京工業大大学院博士課程修了。専門は産業政策論、産業論。著書に「AIが変えるクルマの未来-自動車産業への警鐘と期待」(NTT出版)がある。

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441654 0 深読み 2019/02/14 07:00:00 2019/02/14 12:01:17 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190207-OYT8I50046-T.jpg?type=thumbnail

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