米朝合意なし、「最大譲歩」した北朝鮮の次の一手

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 ベトナム・ハノイで2月27、28両日に開かれた2回目の米朝首脳会談は、物別れに終わった。経済制裁で苦境にあえぐ北朝鮮は、トランプ米大統領との直談判で制裁緩和を勝ち取ることを狙っていた。しかし、交渉の席でトランプ氏は首を縦に振らず、北朝鮮のもくろみは外れた。北朝鮮は今後、どう出るのか。龍谷大学の李相哲教授に聞いた。

金正恩氏、三つの誤算

ハノイで開かれた2回目の米朝首脳会談で、握手を交わすトランプ米大統領(左)と金正恩朝鮮労働党委員長(2月27日、ロイター)
ハノイで開かれた2回目の米朝首脳会談で、握手を交わすトランプ米大統領(左)と金正恩朝鮮労働党委員長(2月27日、ロイター)

――今回の米朝首脳会談が合意なしに終わったのはなぜか。交渉にあたって、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の側に何か誤算があったのだろうか。

 「会談が物別れに終わった理由について、トランプ氏は記者会見で正恩氏が寧辺(ヨンビョン)の核施設廃棄の見返りに経済制裁の全面解除を要求したからだと語っていたが、実際は、北朝鮮に核を放棄する意思がないことが確認できたからではないか。

 米朝双方が追求していた目標は、そもそも実現不可能なものだった。両者の間で非核化に対する考えに食い違いがあっただけでなく、どちらが先に行動すべきかにおいても、正反対の考えを持っていた。それが明確になったから、物別れに終わったのだと思う。

 米国は、北朝鮮が完全な非核化を実現してから、北朝鮮に対する制裁を解除するつもりだったが、北朝鮮は非核化に向けて行動するためには、米国が先に制裁を解除することを望んだ。

 北朝鮮がこのような考えを持つに至ったのは、シンガポールで昨年6月に行われた第1回米朝首脳会談で、米国が北朝鮮にそのような解釈ができる余地を与えたからだ。

 シンガポール会談で出された共同声明は4項目からなっている。第1項が新しい米朝関係の確立、第2項が朝鮮半島における平和体制の構築、第3項が『朝鮮半島の完全非核化』に向けて努力するというものだ。

 この共同声明を厳密に読んでいくと、第1項は米朝の関係改善を目指したものであることがわかる。関係改善のためには、今のような敵対関係を見直す必要がある。敵対関係を止めるには、米国が北朝鮮に科している各種制裁をまず取りやめなければ関係改善はあり得ないというのが、北朝鮮の論法となる。

 第2項は平和体制の構築だが、平和体制構築のためには、現状の(朝鮮戦争の)休戦状態を改める必要がある。つまり、休戦から終戦へと変える必要があるということだ。そのために『終戦宣言』を米国に要求したのだろう。

 このように、1項と2項を履行してくれたら、非核化に向けて行動するというのが北朝鮮の主張だったと思われる。

 しかも、非核化とは『朝鮮半島の完全非核化』なので、これをそのまま読むと、北朝鮮が単独で行動すべきものではない。北朝鮮が寧辺にある核施設の廃棄のような、核能力の一部をなくす措置をとれば、米国もそれ相応の措置をとるように要求できると北は考えた。

 正恩氏の誤算は三つあったと思う。

 最大の誤算は、トランプ氏という政治家に対する理解が不十分だったこと。シンガポール会談以降、北朝鮮は米国の実務者たちとの協議を避けてきた。スティーブン・ビーガン北朝鮮担当特別代表は、最近まで北朝鮮側の交渉相手と会うことすらできなかった。正恩氏は、トランプ氏と1対1なら『だます』ことができると思ったのではないか。

 シンガポール会談での約束の範囲だったら、トランプ氏は応じざるを得ないと考えた。つまり、関係改善、平和構築と同時に非核化に向けて一緒に行動することだ。

 北朝鮮が寧辺の核施設の廃棄という『大きな譲歩』を約束すれば、米国も北朝鮮の要求を受け入れると考えた。

 次に、トランプ氏のほめ殺し戦術に、まんまと引っかかったのではないか。トランプ氏は会談前、正恩氏を持ち上げる発言を繰り返した。トランプ氏が置かれた米国内の政治状況を勘案すれば、成果を欲しがるあまり、大胆なディールを持ちかけてくると見ていた。

 三つ目は、若さと自信過剰だ。北朝鮮の常とう手段ではあるが、高い目標を掲げ、絶対譲らない姿勢を見せれば、相手は折れると読んだのだろう。今まで、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領、中国の習近平(シージンピン)国家主席、トランプ氏との間で首脳外交を展開してきた正恩氏は、今回の交渉も乗り越えられると過剰な自信を持っていたのではないか」

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472627 0 深読み 2019/03/05 07:00:00 2019/03/05 11:23:05 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190304-OYT8I50081-T.jpg?type=thumbnail

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