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金沢文庫駅の運転主任の職人技

――あえて手作業を残す理由が分かりました。設備面ではどうでしょう。
信号機を置く間隔を、150~300メートルほどにしています。これは他の鉄道会社より短いはず。列車は、信号と信号の間に1本しか走ることができないという大原則があります。信号機が多ければ、保守点検の手間は増えますが、より多くの列車を走らせることができるのです。
信号と信号の間隔が短いと、こんな“芸当”もできます。南太田駅(横浜市)は普通列車だけが止まる駅で、ホームは本線から枝分かれした待避線にあります。普通列車の停車中に、後から来た快特列車や特急列車などを通過させる場合、普通列車の最後部が待避線に入ったことを確認できたら、ホームに止まって扉が開くよりも前に、本線を青信号に切り替えます。安全の担保は確実に取っており、ぶつかる心配はありませんが、初めて見た方は、「通過列車がこんなに接近していて大丈夫か」と思われるかもしれません。
――「これぞ手作業」と実感できる場所はありますか。
他の鉄道会社などから「手作業の現場が見たい」と依頼があった場合、ご案内しているのが金沢文庫駅です。
この駅は、上り下り各1本のホームに線路が2本ずつあり、大小3か所の車庫が併設されています。朝のラッシュ時は快特列車と特急列車が約5分間隔で出発し、合間を縫うように普通列車も走っています。始発駅から8両編成で来た快特列車と特急列車には、停車中に、車庫から出してきた4両編成を増結するのですが、座っていくために並ばれるお客さまの列でホームの特定の場所が混まないよう、特急列車は前部、快特列車は後部に増結するルールにしています。
増結車両を車庫から上り線へ移動させるには、列車が行き交う下り線を通らなければならないため、タイミングが重要です。(同駅の)運転主任は、これらの信号操作に加え、構内放送までも全て一人でこなしているのです。「職人技ですね」と感心されます。