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フランスとドイツ、どこが違うのか

水道事業の民間参入、住民がどれだけ関心を持っているかが成功のカギを握る(写真はイメージです)
水道事業の民間参入、住民がどれだけ関心を持っているかが成功のカギを握る(写真はイメージです)

 日本では水道事業にコンセッション方式を導入する仕組みがほぼでき上がったわけだが、海外に目を向けると、単純に市場原理を導入したところでは、むしろマイナスの影響の方が大きいことがわかる。

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 例えば、1980年代から水道事業にコンセッション方式を導入しているフランスでは、上水道の30%、下水道の24%を民間業者が経営している。

 民間企業が参入した後、まず起きたのは水道料金の高騰、水質の悪化である。また、民間業者が民間からの投融資で資金を調達すれば、配当や利払いの負担が大きくなり、これが最終的には水道料金に跳ね返ってくる。そうすると結局、料金を抑えるために資金を拠出するのは公的機関ということになる。フランスでは資金の90%近くを公的機関が拠出しており、自治体の財政負担を減らすという当初のもくろみは達成できていない。

 これらに対する不満が高まった結果、2000年から14年にかけて、49の自治体で水道事業が「再公営化」された。そこには、首都パリが10年にヴェオリアやスエズとの契約期間の終了段階で、契約を更新しなかったという事例も含まれる。

 期待された結果が得にくい大きな原因は、透明性の低さだ。フランスでは民間業者を監督する専門機関はなく、民間が設定した価格が妥当かどうかを自治体が判断する基準もない。規制の緩さは民間業者の裁量の余地を大きくする。事業の効率化などが期待できる反面、民間業者による水増し請求や安全管理の手抜きの温床にもなっている。

 実際、パリ市が02年に行った監査では、経済的に正当化できる水準を25~30%も上回る料金が設定されていた。

 もちろん、民間参入の全てに問題があるわけではない。例えば、ドイツでは上下水道の64%が民間業者によって経営されているが、2000年から14年までの間に再公営化されたのは8自治体と49自治体のフランスより少ない。加えて、料金の上昇率もインフレ率を下回り続け、水道の水をそのまま飲める13か国の中にも入っている(フランスは入っていない)。

 ドイツの場合、コンセッション方式ではなく、自治体と民間が資金を出し合い、水道管理会社を設立する手法が一般的だ。この仕組みでは事業者の裁量の余地は大きくないが、監督者である自治体との間の情報格差は小さく、監査などが実質的なものになるというメリットがある。その一方で、ドイツでは事業者のパフォーマンスを他の企業と比較するベンチマーキングと呼ばれる制度が導入されている。これによって業務の効率化を促し、ムダをなくす仕組みが出来上がっているのだ。

 フランスとドイツの違いを生んだ背景として、地方自治の制度上の差がある。日本以上に中央集権色が強いフランスでは、自治体に対する住民の働きかけが弱く、これが結果的に、問題の目立つコンセッション方式を存続させる一因になってしまった。これに対しドイツは、連邦制であることも手伝って住民の地方政治への関心が高い。自治体には住民の監視の目が光り、パフォーマンスの悪いサービスは存続が難しくなる。

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