依存深刻、「中国マネー」に分断されるEU

無断転載禁止
メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

在独ジャーナリスト 熊谷徹

 習近平(シージンピン)国家主席に続き、李克強(リークォーチャン)首相が欧州を訪問するなど、中国の欧州接近が目立っている。米中対立が深まる中、欧州は中国にとって重要なパートナーとの位置づけだ。欧州は経済協力を歓迎しつつも、中国マネーによる企業買収、技術流出には警戒感も強い。そんな中、イタリアが中国の巨大経済圏構想「一帯一路」参加を決めた。強大な中国に対抗するには欧州が一枚岩になる必要があるが、中国マネーの誘惑に抗し切れなかった国が切り崩されていく。足並みをそろえられない欧州の苦悩をドイツ在住のジャーナリスト・熊谷徹さんにリポートしてもらった。

G7初、「一帯一路」参加のイタリア

ローマを訪問した中国の習近平国家主席(右)。コンテ首相との会談で、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の協力に関する覚書に著名した(3月23日撮影)=AP
ローマを訪問した中国の習近平国家主席(右)。コンテ首相との会談で、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の協力に関する覚書に著名した(3月23日撮影)=AP

 それは、習近平氏にとって大きな勝利だった。イタリアのコンテ首相は3月23日、ローマを訪れた習氏と会談し、「一帯一路」参加に関する覚書に署名したのだ。

 これにより、イタリア企業は中国における製鉄所の建設などで数十億ユーロ相当のプロジェクトを受注するほか、中国はジェノバ港とトリエステ港の整備・拡張工事に投資することが決まった。

 G7(主要7か国)のメンバーで「一帯一路」に参加するのは、イタリアが初めて。欧州からはこれまで、ギリシャ、ポーランド、ハンガリーといった国々が参加を表明しているが、国内総生産(GDP)で欧州連合(EU)第4位(英国離脱後は3位)のイタリアを取り込んだことの意味は大きい。署名式で習氏が満面の笑みを見せたのも無理はない。

イタリアに懸念の声相次ぐ

 イタリアの「一帯一路」参加に対しては、他のEU主要国首脳から、直接名指しすることは避けながらも、懸念を表明する声が相次いだ。

 ドイツのマース外相は3月24日、「中国と賢くビジネスができると信じている国があるとしたら、それは間違いだ。ある日、突然目覚めて、中国に依存していることに気づくだろう。目先の利益だけにとらわれて商談に飛びつくと、あっという間に苦い思いをすることになる」と警告した。

 さらに、マース氏は「中国はリベラルな民主主義国家ではない」と述べ、欧州諸国とは異なる価値観や政治体制を持つ点を強調。「中国は世界を舞台に利益を冷徹に追求している。欧州諸国は一致団結しなければ対抗できない」と、他のEU加盟国に結束を呼びかけた。

 メルケル首相も「各国が共同歩調を取った方が良いのだが……」と述べ、イタリアの抜け駆けとも言える「一帯一路」参加に失望感を表明した。

 習氏が3月26日、パリでフランスのマクロン大統領と会談した際には、メルケル首相とEUの執行機関・欧州委員会のユンカー委員長も駆け付けた。首脳会談に他国の首脳が同席するのは、極めて異例のことである。マクロン氏は「中国からの訪問者に対して、欧州が団結し、協力していることを示したかった」と述べた。

 四者会談後の記者会見でマクロン氏は、EUと中国が多国間主義を重視する点では一致しているとしながらも、「我々は中国の立場を尊重するが、中国もEUの一体性を尊重してほしい」と付け加えることも忘れなかった。

1

2

3

540015 0 深読み 2019/04/16 18:09:00 2019/04/16 18:45:32 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/04/20190412-OYT8I50041-T.jpg?type=thumbnail

おすすめ記事

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ