「おたく」も終活…集めた“お宝”どうなる?

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古書店店長 辻中雄二郎

 自分が死んだ後、築き上げた財産はどうなるのか――。「終活」を意識する年齢になり、そんな悩みを抱えるのは資産家ばかりではない。時間とお金を費やして、趣味の品々を集めてきたコレクターたちも、自らの手を離れた後の「お宝」の行く末を案じるという。中でも、「おたく」と呼ばれるサブカルチャー愛好家たちの悩みは深い。当事者以外には価値がわかりづらい収集品が多いからだ。老境に差し掛かったコレクターたちの切実な思いとは――。

希少漫画コレクターが打ち明けた悩み

写真はイメージです
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 アニメやSFなど、特定の趣味を徹底的に掘り下げる人々を指す「おたく」。この言葉が注目され始めたのは、1980年代の初めのことだ。その“第1世代”は、そろそろ初老と呼ばれる年齢になる。おたくの活動は近年、「クールジャパン」の一要素として海外でも注目を集め、コレクション品の売買も熱を帯びている。矢野経済研究所(東京)の推計によれば、2017年度の市場規模はアニメ分野だけで2680億円に上った。それらの鑑定や売買を手掛ける東京・中野の古書店大手「まんだらけ」の辻中雄二郎副社長(47)は、最近、収集家たちの変化を感じていると話す。

 「まんだらけ」が東京・中野で創業して、来年で40年になります。当時20歳前後だった常連のお客さんは、そろそろ還暦です。自身が亡くなった後の、コレクションの行き先を案じ始める年齢のようで、趣味の品々を残したまま、家族に迷惑をかけたくないという思いが強まるようです。そうした悩みを抱えながら暮らすコレクターが、世の中に多くいるのだと感じる出来事もありました。

 今年3月、我が社のあるサービスのチラシ画像がツイッターに投稿され、リツイート数が2万件を超えました。終活を考える人向けにコレクション品を鑑定するという内容のチラシだったのですが、それがネット上のまとめサイトに転載されると、「家族にゴミとして捨てられるくらいなら、大事にしてくれそうな人に……」「自分もそんな年齢ではないけど、よく考える」などの趣旨のコメントが多く寄せられました。

 人生を終える日に備え、身の回りを整理しておく――。「人生100年」と言われる一方で、終活を考え始める時期は早まりつつある。特定非営利活動法人「国境なき医師団日本」(東京)が2年前に行った意識調査によれば、60歳代の46%が「自分の万一の事態に備え、エンディングノートを作っておく必要がある」と答えた。家族の関心も高い。葬儀関連の総合情報サイトを運営する「鎌倉新書」(同)が昨年10月、親が存命する40歳以上の男女に聞いたところ、親の終活に関して「一緒に取り組んでおかないと困ることがあるか」との問いに、約92%が「はい」と回答。そのトップは「持ち物の整理」(約50%)だった。一方で実際、一緒に整理に取り組んでいると答えたのは約18%にすぎなかった。

 終活についてあれこれ悩む傾向は、趣味で何かを収集してきた人も同じです。

 3年ほど前、「巨人の星」「いなかっぺ大将」などで知られる漫画家、川崎のぼるさん(78)の希少作を収集している50歳代の男性に打ち明けられました。「あいにく妻も子も、私の趣味には興味がない。今は元気なので売るつもりはないが、私に何かあった時のため、(集めた品の)査定だけでもしてほしい」と。家族は価値がわからないらしく、(自身が亡くなった後)粗末に扱われてしまうのではと心配している様子でもありました。

 この男性、ビンテージ(年代物)漫画の分野では、とてつもなくすごいコレクターなんです。川崎さんのデビュー作である「乱闘・炎の剣」の単行本(1957年)を始め、70年以前の掲載誌、貸本漫画家時代の川崎作品は「大体そろっている」とのこと。初期作品を撮影した写真を数点見せてもらっただけでも、コレクションの全貌が想像できました。

 高齢の方が亡くなり、長年かけて買い集めた漫画本を家族が業者に見てもらったところ、数百万円の値がついて家族がびっくりされるのもそんなに珍しい話ではありません。「場所を取る厄介物だと思っていたけど、『貴重な物だぞ』というお父さんの話はウソじゃなかったんだ」という感嘆の声を聞くこともあります。

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555760 0 深読み 2019/04/27 07:00:00 2019/04/27 07:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/04/20190422-OYT8I50096-T.jpg?type=thumbnail

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