米・イラン対立激化、仲介役日本の高いハードル

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住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリスト 広瀬真司

 米トランプ政権がイランに対する圧力を強め、ペルシャ湾地域に緊張が高まる中、安倍首相が12日、イラン訪問のため羽田空港を出発した。滞在中にはロハニ大統領だけでなく、最高指導者のハメネイ師とも会談する見通しで、14日に帰国する。石油の大半を中東に頼る日本にとって湾岸地域の安定は死活問題だが、米国とイランの対立は長年にわたるものであり、打開策を見つけるのは容易ではない。激しい非難の応酬の中に隠された双方の本音をどう読むか。その中で日本はどんな役割を果たせるのか。住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリストの広瀬真司さんに寄稿してもらった。

エスカレートする対立

 「戦闘をする気なら、イランは正式な終わりを迎えることになる。二度と米国を脅すな!」

 トランプ大統領は5月19日、ツイッター上でイランに対し、強い言葉で警告を発した。実際、米国とイランの間の緊張は、近年では例がないほどに高まっている。

 ここ2か月ほどの動きを振り返ってみよう。4月8日、米国はイランの革命防衛隊をテロ組織に指定すると発表した。革命防衛隊はイラン革命を主導した最高指導者のホメイニ師の下に設立された組織である。それに対しイランは、米国をテロ支援国家であると宣言し、中東地域に展開する米中央軍をテロ組織に指定した。

 同月22日、米国政府はイラン産原油の禁輸措置を巡り、日本など8か国・地域に認めてきた適用除外を5月以降は延長しない方針を発表した。石油収入がなくなればイランの国家収入は激減し、大きな打撃となる。

 5月5日には、ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)が、空母エイブラハム・リンカーンを中心とする空母打撃群と戦略爆撃機B52からなる部隊をペルシャ湾に派遣すると発表し、一気に緊張が高まった。

 7日には、欧州歴訪中のポンペオ米国務長官がイラクを電撃訪問。イラク国内の米国の権益に対し、イランによる攻撃の可能性が高まっているとして、備えを呼びかけた。

 翌8日は、トランプ大統領がイラン核合意からの離脱を発表してから、ちょうど1年にあたる。イラン政府は、合意で定められている濃縮ウランと重水の貯蔵量に関する規定を今後は守らないと発表した。また、離脱した米国を除く核合意の当事国である英仏独中露の5か国に対し、米国によるイラン産原油の禁輸や金融制裁に60日以内に有効な対策を打てなければ、ウランの濃縮度の規定も守らないと警告した。

 これに対し米国は、イラン産の鉄や鋼、銅、アルミニウムの取引を禁じる新たな制裁を課すと発表した。イランにとってこれらの産業は原油に次ぐ大きな産業である。米国は圧力を強化することで、さらにイランを追い詰めていく意思を明確にした。

ペルシャ湾地域全体に広がる緊張

ホメイニ師死去から30年となる4日に開かれた行事で、聴衆に手を振るイランの最高指導者ハメネイ師(AP)
ホメイニ師死去から30年となる4日に開かれた行事で、聴衆に手を振るイランの最高指導者ハメネイ師(AP)

 その4日後の12日、事態はさらに悪化の様相を見せた。ホルムズ海峡への入り口にあたるアラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ沖で、4隻の原油タンカー(うち2隻はサウジアラビア船籍)が何者かによる攻撃を受けた。犯行声明は出ておらず、犯人はまだ分かっていないが、米国政府は事件の背後にいるのがイランである「証拠」をつかんでいると発表した。証拠が具体的に何を指すのかは、明らかにされていない。

 14日、今度はサウジ国内を東西に横断する送油パイプラインのポンプ施設2か所がドローンによる攻撃を受けた。こちらは、事件直後にイエメンのシーア派武装組織「フーシ」が犯行声明を出した。フーシはイランとの関係がささやかれる組織である。

 翌15日には、米国政府がイラクに駐在する米大使館および領事館のスタッフのうち、緊急を要する業務を行っている人以外を国外に退避させると発表した。19日には、首都バグダッド中心部に砲弾が打ち込まれる事件が発生。砲弾が米大使館を狙ったものかどうかは不明だが、数日のうちに立て続けに起きた事件は、イランだけでなくペルシャ湾地域全体に緊張が広がっていることを示した。

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633150 0 深読み 2019/06/12 13:40:00 2019/06/12 14:51:46 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190612-OYT8I50004-T.jpg?type=thumbnail

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