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    国際

    慰安婦問題をめぐる意外と知らない韓国人の本音

    新潟県立大学教授 浅羽祐樹

    「年代」「支持政党」「政権評価」など、各種の属性ごとに見直すと……

    • ソウル市内の日本大使館前にある「慰安婦」少女像(15年12月28日、撮影)
      ソウル市内の日本大使館前にある「慰安婦」少女像(15年12月28日、撮影)

     韓国ギャラップの世論調査(1月第1週)によると、今回の合意を「評価する」のは26%であるのに対して、「評価しない」は54%に達する。少女像についても、「移転してもいい」は17%にすぎず、「移転すべきでない」が72%と圧倒的である。さらに、「日本と再交渉すべきだ」という声も58%もある。読売新聞(「慰安婦日韓合意「再交渉を」58%…韓国世論調査」1月9日付)をはじめ日本のマスコミが報じたのは、ここまでである。これだけだと、「蒸し返し」に対する不信感が強まるかもしれない。

     しかし、属性ごとに分けると、ニュアンスが分かってくる。韓国世論は「反日」一色では決してなく、年代、支持政党、政権評価によって大きく分裂している。

     たとえば、19歳(韓国では2006年から19歳も投票できる!)と20代では、日韓合意を「評価する」はわずか9%だが、年代が上がるにつれ高まり、60代以上では54%で、「評価しない」を上回る。また、与党セヌリ党を支持していると、50%が合意を評価している反面、「再交渉すべきだ」と主張している最大野党の「共に民主党」支持だと7%にすぎない。政権評価でも同様で、朴政権に肯定的だと54%が合意も評価している反面、否定的だと7%しか評価していない。

     こうした年代、支持政党、政権評価によって政策争点に対する評価が割れる現象は、対日外交政策に限らず、朴政権下で一般に確認されている。だとすると、集計データの世論調査だけでは断定しきれないが、他のサーベイ調査と合わせて考えると、「反日」一色に見える韓国世論も、「慰安婦」合意そのものに対する評価というよりも、支持政党や政権評価の違いがそのまま投影されただけにすぎない可能性が高い。つまり、「自らが支持する政党の政権がすることだから(何でも)賛成」、あるいは「自らが支持しない政党の政権がすることだから(何でも)反対」なのかもしれない。

     その傍証に、「評価しない」理由として「元慰安婦の女性の意見を聞かなかった」(34%)が、「謝罪が不十分/明確でない」(12%)、「金で解決しようとした」(9%)「『不可逆的』とされた」(1%)などを圧倒しているが、これは朴政権に対して就任以来提起されてきた最大の批判である「国民との意思不通」と全く同じである。朴大統領は「事前に当事者や支援団体の意向を聴取し、合意に十分反映させた」と年頭記者会見で強調したが、自国世論による同意に苦心している。

     少女像の移転についても、年代、支持政党、政権評価によって割れるという同じ傾向が見られる。ただ、60代以上、セヌリ党支持層、政権評価層、さらに合意を評価する場合でも、「移転してもいい」が「移転すべきでない」を上回ることはない。

     

     

    2016年01月26日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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