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    「超人スポーツ」の挑戦 人類の限界を超えろ

    慶応大学大学院教授 中村伊知哉
     パラリンピックで義足のランナーが健常者の記録を上回る時代が訪れた。テクノロジーの進歩が人類の限界を盛んに突き崩している。機械と一体になることで、人類はどこまで不可能を可能にするのだろう? 慶応大学大学院の中村伊知哉教授に、科学技術とスポーツの観点から、現代スポーツの最前線を解説してもらった。

    超一流のアスリートと競い合う楽しみ

    • バネの付いた竹馬のようなシューズをはいてぶつかり合う「バブルジャンパー」
      バネの付いた竹馬のようなシューズをはいてぶつかり合う「バブルジャンパー」

     障害者スポーツの祭典、リオ・パラリンピックが始まった。競技で使われる義足や車いすなどの用具は、格段の進化を遂げてきた。たとえば、陸上競技で使用される「板バネ」。その開発には、複雑にかかる荷重を計測するため、最新のバイオメカニクスが使われている。板バネのしなり具合や反発力、地面との摩擦係数に至るまですべて計算されている。

     その結果として、義足の走り幅跳び選手、ドイツのマルクス・レームは昨秋、障害者による世界選手権で8メートル40の世界記録を打ち立てた。リオ・オリンピック男子走り幅跳びの金メダリスト、ジェフ・ヘンダーソン(米)の記録が8メートル38だったことを考えると、義足の選手が健常者の記録を上回る時代はすでに訪れていると言える。

     パラリンピックの外に目を向ければ、建築、農業、介護などの労働現場で、腕や足腰の筋力を補強する「パワードスーツ」が実用段階にある。着用すれば、力の弱い人でも重い物を軽々と移動することができる。アスリートに限らず、一般の人たちもテクノロジーを使って身体能力を拡張することが身近になりつつある。

     近い将来、普通の子どもでも装置を身に付ければウサイン・ボルト選手のように速く走れるようになるだろう。おばあちゃんがレスリングで吉田沙保里選手に勝てるかもしれない。最先端のテクノロジーを使えば、年齢、性別、障害の有無にかかわらず、オリンピアンのような「超人」たちと一緒になって楽しく汗を流せる――。私はそんな空想世界を実現してみたいと思っている。

    2016年09月09日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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