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    国際

    フランスの「ブルキニ」禁止令と癒せない病理

    在英ジャーナリスト 小林恭子
     イスラム教徒用に考案された全身を覆う水着「ブルキニ」を、フランスの複数の自治体が禁止したことで波紋が広がっている。フランスには政教分離の原則があり、宗教的帰属を表す水着は「公共の秩序を乱す」というのが禁止の理由だ。これに対し、「行き過ぎだ」「女性が何を着るかは自由であるべき」「イスラム教徒に対する偏見を広げる」などといった批判がフランス国内外で出て、国論を二分する騒ぎになっている。この問題はどう考えればよいのか。在英ジャーナリスト小林恭子氏がその経緯と背景を紹介する。

    体を覆いながらも活動しやすい水着

     ブルキニとは、ビキニという言葉と、イスラム教徒の女性が着る全身を覆う衣装の「ブルカ」という言葉を組み合わせた造語だ。商品名だが、総称としても使われている。

     “発明”したのはオーストラリアに住むイスラム教徒の女性アヘダ・ザネッティ氏だ。スポーツ好きの10代の(めい)のために、活動しやすい水着を考案した。出来上がったのが、頭部にフィットした帽子、長袖のTシャツにズボンが付いた格好の「ブルキニ」だ。顔と手先、足先は露出する形で、ダイビングスーツに水泳用帽子を付けたようなデザインになっている。

     本物のブルカは、全身を布で覆い、目の部分は網状の布になっている。

     イスラム教徒の女性は、全員ではないものの、慎み深さと信仰心を示すために外出時に体の一部を覆う布をまとうことが多い。他にも頭髪を包み込むようにしてかぶるスカーフ状の「ヘジャブ」や、全身を覆いながらも目の部分は隠さない衣装「ニカブ」などがある。

     ブルキニが市場に出たのは2004年。ザネッティ氏によると、あるイスラム教徒の少女がブルキニを着てスポーツイベントに参加したことがきっかけで、その存在が広く知られるようになった。

    • 体を覆いながらも活動しやすいブルキニ
      体を覆いながらも活動しやすいブルキニ

     ザネッティ氏自身がブルキニを着て初めて泳いだのは地元のプールだった。外出時には頭髪でさえ隠す多くのイスラム教徒の女性にとって、一般的な水着姿で公の場で泳ぐことは不可能だった。ブルキニを着て水の中に入ったザネッティ氏は「ああ、自分は自由なんだ!」と心から思ったという(英ガーディアン紙、8月24日付)。


    2016年09月09日 12時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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