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    社会

    相次ぐ盗伐、その裏に見える日本の森の大問題

    森林ジャーナリスト 田中淳夫
     日本の森林は国土の3分の2を占めるが、森を守る担い手である林業を取り巻く現状は深刻だ。国産材の価格は下落が続いており、採算が取りづらくなって久しい。それにつれて、就業人口が減少した。そのような状況下、他人や国・地方自治体の森林を無許可で伐採する盗伐が最近増えているそうだ。その実態について、森林ジャーナリストの田中淳夫さんがレポートする。

    全国的に多発する盗伐

    • (画像はイメージです)
      (画像はイメージです)

     今年9月、宮崎市で森林所有者に無断で伐採届が同市に提出され、所有者の知らないうちに約2000平方メートルのスギ林が伐採されていたという事件が発覚した。その伐採届は昨年11月に提出され、所有者の氏名や押印もあったのだが、その所有者はすでに死亡していた。同市は盗伐の可能性が高いとみている。所有者の親族は、宮崎北署に被害届を提出した。

     森林法では、伐採を始める90日前から30日前までに、「伐採および伐採後の造林の届出書」を市町村に提出しなければならない。自治体は届け出を確認したら、所有者と伐採業者に受理した通知書を送付するのだが、このケースでは所有者が死亡していたため、所有者側に通知書は届かなかった。電話しても通じなかったという。

     この類いのケースは宮崎県だけではなく、全国的な傾向になっている。

     福島県相馬市では昨年、森林所有者13人の同意を得ないまま、伐採業者が約8700平方メートルの森林を伐採した。山梨県身延町でも昨年、伐採届が提出されないまま、森林3万9000平方メートルが伐採されてしまった。三重県志摩市では同じく昨年、伊勢志摩国立公園内の森林を無許可で伐採して太陽光発電所を建設したとして、東京都の発電会社などが書類送検された。

     ほかにも「業者から伐採させてくれという話は来たが、断ったのに勝手に()られた」「久しぶりに所有している森林を見回りに行くと、知らないうちに道が作られ、広範囲に伐られていた」「国立公園や景観保全地区に含まれる山林が無断で伐採されていた」――といった盗伐事件が全国で多発しているのだ。

     近畿圏内で伐採事業を手がける業者は、「20年くらい前までは木材が高く売れたので、他人の山の木をこっそり何本か抜き伐りするような盗伐は時折あった。『雷の鳴っている日だと、伐採の音がわからなくていい』とか言われた。しかし、広範囲に森林を伐採するケースは滅多(めった)になかったし、今の価格では(もう)からないはずなんだが……」と首をかしげる。

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    2016年11月19日 14時16分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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