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    芸能

    「君の名は。」200億円突破のワケ

    読売新聞調査研究本部主任研究員 福永聖二

    立役者は「電車男」の川村元気プロデューサー

     さまざまな理由を指摘できるだろうが、前出の川村プロデューサーが立役者であることは間違いない。37歳の川村さんは01年、東宝に入社。「電車男」「告白」「悪人」「バケモノの子」などを手がけてきた、注目の若手プロデューサーだ。

    • 注目を集める若手プロデューサー、川村元気さん
      注目を集める若手プロデューサー、川村元気さん

     川村さんと新海監督の出会いは、新海監督のデビュー作「ほしのこえ」にさかのぼる。川村さんは、作品を見てその才能に驚いたという。「新海監督が所属していた制作会社を訪ねて社長と会い、『いつか一緒に仕事をしたいですね』と話しました」。13年に中編「言の葉の庭」を東宝映像事業部が配給したことから、「次は長編でチャレンジしよう」と「君の名は。」の製作に向けて動き出したのだ。

     企画のスタートに当たって、小野小町の和歌「思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを」がモチーフに据えられた。「少年と少女が夢の中で入れ替わる」という新海監督の発想から物語づくりが始動した。

     「僕にできることは脚本作りへの協力」と川村さんが言うように、新海監督の脚本を4、5人のプロデューサー陣で読み込んでは、いろいろな意見を出し合った。ヒロインに好きな人がいたのをやめたり、爆発場面を加えたり……。半年ほど時間をかけて、新海監督が脚本を練り上げるのをサポートしたという。

     結果的に大ヒットを呼んだ脚本づくりの過程では、何が意識されたのか?

     「昔は、ひと言で言えるようなシンプルな物語が良い、とされてきましたが、今はそうではないと思います。ロマンチック・コメディーに民話的エピソード、SF、音楽的快楽など、複雑な要素をこれでもかとばかり盛り込みました」。作品世界が豊かな物語性に満ちている理由を、川村さんはそう語る。

     「意見は言いましたが、最終的にはあくまでも新海監督の作家性に任せました。観客もそれぞれ、自分の好きな部分を見つけられる楽しみがあります。何回見ても新しい発見があるように工夫しました」(川村さん)。こうして、それまでの新海作品にはやや足りなかったエンターテインメント性が十二分に発揮される脚本が完成したのだ。

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    2016年12月08日 11時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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