日本の山には「何か」がいる!・・・続く『山怪』ブーム
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山にまつわる不思議な話や体験談を集めた『山怪 』(山と渓谷社)が注目されている。刊行から約1年半で9万部を超えるなど、この種の出版物としては異例のベストセラーになっている。1月中旬には続編の『山怪弐 』が出され、すでに3刷、3万5000部に達している。著者は、30年以上にわたって秋田の阿仁 マタギなど各地の猟師を追い続けてきたフリーカメラマンの田中康弘さん(58)。なぜ『山怪』が受けているのか。出版の経緯を著者に聞くとともに、広く受け入れられている理由などを探った。
雪の中に突然姿を現し、消えた「夜店」

今から40年ほど前、秋田県・旧阿仁町
ある冬の日、いつものようにとっぷりと日が暮れて暗くなった帰り道。雪明りだけが頼りの寒い日だった。いつものように辻に近づく。
「本当にあそこは怖かったもんなあ、暗くてよ。でもあの日は、そこさ曲がって、ぱって前見て驚いたんだぁ」
泉少年が見たものは明るい光の列だった。
「いやあ、明るくてな。見たら夜店が出てるんだぁ。靴屋とか玩具屋とか五、六軒あったんじゃないかなあ。あれぇ、今日はお祭の日だったかなあって、しばらくその店を眺めてたんだぁ」
雪の中に突然姿を現した明るい店に見とれていると、その光が急に消えた。まるでいきなり停電にでもなったかのようだった。
「えっ?」
泉少年が
「山怪」とは、山の怪異のこと。狐や
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