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    社会

    「天下り禁止」に異論・・・“ミスター文部省”が見た問題点

    京都造形芸術大学教授 寺脇研

    「天下り」のどこが問題なのか

    • 再就職あっせん問題について記者会見する松野文科相(2月21日)
      再就職あっせん問題について記者会見する松野文科相(2月21日)

     ただ、わたしは、これを「天下り問題」と片付ける論調には従うことができない。

     「天下り」という語には誰しも悪いイメージしか持たないだろう。天すなわち上に位置する者が、その権力を(かさ)に着て下に位置する者に不当な好条件で雇用を求めるという意味合いだからだ。江戸時代から戦前まで、公権力を持つ者を「お上」と呼び、それ以外を「下々」として上下関係を歴然とさせていた考え方は、日本国憲法第15条で「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利」となり、公務員が「全体の奉仕者」としてパブリック・サーバント(国民の召し使い)とされた現在でも、なお色濃く残っている。

     もし上下関係としての「天下り」とするならば、その弊害は明白である。上は、下に対して無能な人間を押しつけることも可能であり、受け入れ先の仕事に支障をもたらすおそれがある。それより深刻なのは、受け入れの代償に、上が下に不正な便宜を図ったり、下の不祥事への措置に手心を加えたりする可能性だ。これは明らかな犯罪である。

     公務員が犯罪に加担するのは重大な不正だから、そう簡単にあり得る話ではないのだが、どうやら日本の公務員の信用度は低いようだ。加えて最近は、公務員バッシングが続く中、疑いの目で見られることが多い。前述の消費者庁長官の事案は組織トップの行為だけに、もし官僚が長官だったら激しい非難を浴びただろうが、民間人出身だったために、さしたる騒ぎにもならなかった。公務員の評判悪いことかくの如し。そうした国民の意識を肝に銘じておく必要があろう。

    的はずれな「天下り」批判も

    • 衆院予算委員会で答弁に臨む文科省OBの嶋貫和男氏(左)と前川喜平・前文科次官(2月7日)
      衆院予算委員会で答弁に臨む文科省OBの嶋貫和男氏(左)と前川喜平・前文科次官(2月7日)

     しかし、感情論を離れ冷静に考えると、「天下り」のような俗語でなく厳密な言葉で議論する必要があるのではないか。ここで定義を正確に、「公務員の再就職」としよう。

     公務員の再就職自体は禁じられていない。そのやり方にいくつか規制がかけられているのである。大きくは、(1)官庁が再就職に関与すること(2)本人が在職中に求職活動をすること(3)再就職した者が離職後2年間の期間に元勤務した官庁に働きかけをすること――の3点だ。

     逆に言えば、この3点さえ守れば、再就職は許されているわけだ。にもかかわらず、許されている範囲に対してまで問題視するのは明らかに行き過ぎだろう。今回の一件は国会でも取り上げられ、野党のみならず与党の議員からも厳しい指摘が続いている。自民党の河野太郎議員は衆議院予算委員会で国立大学法人(従来の国立大学)への現役職員の出向人事まで「天下り」と呼び、禁止すべきだと主張した。これは全く的はずれだ。国立大学法人を含む独立行政法人への現役出向は合法と認められているからである。

     こんな調子だから、与野党政治家の感情的批判に従うならば、再就職に関する規制はいっそう厳しくなってしまいかねない。それでいいのだろうか。

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    2017年03月02日 11時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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