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誤算続き? 豪腕ドゥテルテ大統領が直面する試練

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警察は「根っこから腐っている」

麻薬犯罪に関与した疑いで身柄を拘束され、連行されるのを待つ容疑者たち(マニラ近郊のケソン市で、3月16日)=AP
麻薬犯罪に関与した疑いで身柄を拘束され、連行されるのを待つ容疑者たち(マニラ近郊のケソン市で、3月16日)=AP

 国内外から非難の声が高まっても、ドゥテルテ大統領の決意が揺らぐことはなかった。麻薬戦争の手法はドゥテルテ大統領がダバオ市長時代に実践済みで、ダバオの治安改善に大きく貢献した。国連や欧米諸国からの非難に対しては、ドゥテルテ大統領は語気を荒らげて「実態を知らないくせに批判するな」と反論した。

 ところが、そのドゥテルテ大統領が、1月末に突然、麻薬戦争の「一時中断」を宣言した。理由は、国家警察の違法薬物捜査班の中に権限を悪用する腐敗した警官がいるので、まずはその一掃が必要というのである。

 きっかけとなったのは、昨年10月に韓国人ビジネスマンが誘拐され、警察署内で殺害された事件である。警察官が関与した疑いが濃厚となり、今年1月、ドゥテルテ大統領は韓国政府に公式に謝罪した。同時に、フィリピンの警察官の4割は犯罪に関わっており、警察は「根っこから腐っている」として厳しい言葉で非難した。

 しかし、3月に入ると、国家警察は、違法薬物関連の事件を捜査する専門部署を新たに設置し、その部署に配属される警察官は厳しくチェックするとして、薬物対策を再開すると発表。さらに、今後は「血の流れない」対策を行うと宣言した。ドゥテルテ大統領は、省庁を横断する麻薬対策委員会を設置し、包括的な麻薬対策を進める方針を明らかにした。

押収された違法薬物(AP)
押収された違法薬物(AP)

 ドゥテルテ大統領は、麻薬戦争を一時中断した際、麻薬対策自体は自身の任期が終了する2022年まで続けると述べていた。しかし、警察の腐敗と捜査に対する国民の懸念という現実を前に、体制の立て直しを余儀なくされた格好である。

 とはいえ、薬物対策が再開された翌日には、早くも4人の容疑者が警察に射殺されている。「血の流れない」取り締まりへの道は遠いと言わざるをえない。

 この日はまた、ドゥテルテ大統領の主導により、重大な薬物犯罪を適用対象とする死刑復活法案が下院を通過した。力で麻薬犯罪者および麻薬組織の制圧を目指す「麻薬戦争」の基本方針に変更はないようである。

くすぶる弾劾を求める動き

警察が昨年行った麻薬取り締まりで夫と息子を殺害されたとして、訴えを起こした女性(AP)
警察が昨年行った麻薬取り締まりで夫と息子を殺害されたとして、訴えを起こした女性(AP)

 ドゥテルテ大統領の強権的な姿勢は、麻薬戦争のみならず、独裁者だったマルコス元大統領(在任1965~86年)の英雄墓地への埋葬や、戒厳令導入の可能性に言及したことにも表れている。こうした姿勢に対しては、メディアだけでなく議会でも反発の動きがみられる。その急先鋒(せんぽう)となっているのはレイラ・デリマ、アントニオ・トリリャネスの両上院議員である。

 デリマ上院議員は、ベニグノ・アキノ前政権で司法長官を務めた時から当時ダバオ市長だったドゥテルテ氏の麻薬対策を批判していた。ドゥテルテ政権発足時には上院の司法人権委員会の委員長を務め、ドゥテルテ大統領の「麻薬戦争」を激しく非難した。

 昨年、ドゥテルテ大統領がダバオ市長時代に自らの手で「3人の容疑者を殺害した」と述べた際には、「弾劾の理由となる」と発言していた。なお、ドゥテルテ大統領の発言に対しては独立機関である「人権委員会」が調査を進めている。

 トリリャネス上院議員も、大統領選の時からドゥテルテ氏のダバオ市長時代の超法規的殺人や不正資金疑惑を取り上げており、最近、ドゥテルテ大統領弾劾のキャンペーンを開始した。

 これに対してドゥテルテ大統領は、デリマ上院議員は自身が違法な薬物取引に関与していると反駁(はんばく)した。デリマ上院議員は昨年9月、司法人権委員会の委員長を解任され、今年2月には違法な薬物の取引に関与した疑いで起訴、逮捕された。昨年12月にはドゥテルテ大統領に批判的な発言をしていたレニー・ロブレド副大統領が、兼務していたポスト(住宅都市開発調整委員会委員長)から事実上解任されている。こうした一連の動きはドゥテルテ大統領による政敵排除の一環との見方もある。

ドゥテルテ大統領による死刑復活に抗議し、デモを行う女性グループ(AP)
ドゥテルテ大統領による死刑復活に抗議し、デモを行う女性グループ(AP)

 また、トリリャネス上院議員の主張が弾劾につながる可能性も低い。超法規的殺人については新たな証拠が出てきたわけではなく、不正資金疑惑についてもドゥテルテ大統領の口座に振り込まれた資金の違法性を証明するには至っていないためである。トリリャネス上院議員はアロヨ政権(2001~10年)時代にクーデター未遂事件を起こし、収監されたことがあり、周囲に決起を促すほどの影響力は持ち合わせていないという声がもっぱらだ。

 こうした状況の下、3月16日、ガリー・アレハノ下院議員がドゥテルテ大統領の弾劾を下院に申し立てた。理由は、超法規的殺人の指示、汚職行為などである。その背後にはトリリャネス上院議員がいるともいわれている。フィリピンでは、弾劾裁判の発議には下院で3分の1以上の賛成が必要であり、下院議員の8割超がドゥテルテ大統領を支持する超党派の連合を組む現状においては、アレハノ下院議員の申し立てが可決される見込みはない。

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432062 0 深読み 2017/03/23 10:39:00 2017/03/23 10:39:00

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