北朝鮮・金正恩体制が制裁にビクともしない理由

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 北朝鮮は5日朝、弾道ミサイル1発を発射した。核開発やミサイル発射など、暴走を続ける北朝鮮に対し、国際社会は厳しい経済制裁を科している。しかし、その効果はなかなか表れてこない。 金正恩(キムジョンウン) 朝鮮労働党委員長が率いる現体制は崩壊の兆しを見せるどころか、金委員長の権力掌握が進み、ますます強固になったとの見方まである。金正恩体制の実態はどうなっているのか。朝鮮半島情勢に詳しい龍谷大学教授の李相哲さんに分析してもらった。

闇市場で息を吹き返した経済

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(撮影日不明)=ロイター
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(撮影日不明)=ロイター

 経済的な側面からすれば、北朝鮮は一度崩壊したとみるべきだろう。1991年のソ連崩壊後、93年ごろから北朝鮮経済はほぼ麻痺(まひ)状態に陥った。旧ソ連など社会主義諸国からの支援が途絶えた上に、核開発問題で国際社会の制裁を受けることになったからだ。

 それまで北朝鮮の住民は、食糧だけではなく生活に欠かせない塩、砂糖、味噌(みそ)醤油(しょうゆ)、酒にいたるまで配給に頼っていた。当時の政権は住民に支給する物資を調達できる能力を喪失、配給を止めざるをえなかった。その結果、餓死者が続出し、90年代終わりころまでに「200万人以上の住民が餓死した」(97年に韓国に亡命した黄長(ファンジャン)ヨプ(※)元朝鮮労働党書記の証言)とされる。※(ヨプは「火」へんに「華」)

 住民の多くは、食べ物を探して国中を彷徨(さまよ)い、生き残りをかけて国から逃げ出す(脱北)ことになった。脱北者数がピークに達した90年代終わりごろには、主な脱出先である中国には40万人もの脱北者がいたという統計もある。

 脱北者の一部は、食糧やお金を持って国に戻り、中朝国境を行き来しながら(ひそ)かに物を売ったり、物々交換を行ったりするようになった。そうして生まれたのが北朝鮮の闇市場だ。

 配給責任を放棄せざるを得なかった当局は、生計を維持するために自然発生的に生まれた闇市場を完全に取り締まることはできず、見て見ぬふりをするしかなかった。それまで北朝鮮の一般住民は、隣の町に出向く時でさえ、7つ以上の証明書を持参し、地元当局の許可を得なければならなかったが、食糧調達する住民を当局が無理やり統制することはできなかった。

 このように自然発生的に始まった経済活動は、その後も拡大を続け、今では国内の経済活動の8割以上を占める規模となった。北朝鮮経済が外見的に良くなっているように見えるのは、こうした住民による経済活動、すなわち「住民経済」が活発になったからだ。そのおかげで餓死者は減り、脱北者も少なくなった。

 闇市場の出現により、北朝鮮では経済システムだけでなく、統治システムにも大きな変化が訪れた。時の政権が体制維持に必要なお金を調達する「首領経済」と、市民が生計を立てるために自発的にお金を稼ぐ「住民経済」が完全に分離されたことで、政権は統治に必要な資金を住民から吸い上げることができなくなり、自ら調達しなければならなくなった。

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