「年上の妻」だけでは語れないマクロン氏の横顔

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教師との大恋愛、そして結婚

 文学好きのマクロン氏はカトリック系私立校に進学する。ここで「運命の出会い」が待っていた。成績はトップクラス、ピアノが弾けて学校劇では俳優として活躍するマクロン氏が、フランス語とラテン語を教える女性教師で演劇部の担当をしていたブリジット・トロニューさんの目に留まったのである。

 後にブリジットさんはこう語っている。「とても頭が良くて、ほかの誰からも聞いたことがないような考え方をしていると思った」

 マクロン氏にとっても、ブリジットさんは強い印象を残したようだ。2人で劇の台本を書き直しているうちに、いつしか恋愛感情が芽生えた。

 しかし、2人には越えなければならない壁があった。当時、マクロン氏は10代半ば。チョコレート会社を経営する裕福な家庭で育ったブリジットさんは40歳近くで、銀行家の夫との間に子供が3人いた。そのうちの1人はマクロン氏の同級生だった。

 2人は自分たちの恋愛を周囲には秘密にしていたが、友達と旅行に出かけると言って実はブリジットさんと一緒にいたことがわかり、2人の関係が知られてしまった。父は「椅子から転げ落ちるほど、驚いた」という(アン・フルダ氏によるマクロン氏の伝記『Emmanuel Macron: Un Jeune Homme Si Parfait(エマニュエル・マクロン、完全な若い男性)』による)。

 両親はブリジットさんに会い、「息子が18歳になるまで会わないように」と頼み込んだ。マクロン氏は高校生活の最後をパリの名門アンリ4世高校で送った。アミアンはパリから120キロ離れているが、伝記によると、両親がマクロン氏をパリに送ったのは2人の仲を裂くためではなかったという。

 しかし、17歳になったマクロン氏はブリジットさんに「何があっても、結婚する」と宣言していた。2007年、マクロン氏が30歳になる直前、ブリジットさんが54歳の時に、2人はようやく結婚にこぎつけた。現在、2人は公私ともに良きパートナーとなっている。選挙期間中に声の調子など演説の仕方について助言をしていたのもブリジットさんだ。

 大統領選で当選が決まり、ルーブル美術館前の広場で勝利演説を行ったマクロン氏が、演説の終わりに舞台上にブリジットさんを呼ぶと、聴衆の間から喝采が沸き起こった。このカップルがフランスでは多くの人に受け入れられていることを示した瞬間だ。

名門教育機関から政治の中枢へ

 高校卒業後のマクロン氏はパリ第10大学に入学、哲学者ヘーゲルについての論文で学位を取得した。その後はフランスの高等教育グランゼコールの一つで、教員を養成する高等師範学校(ENS)を目指した。しかし、入学試験で2度失敗。そこで、同じくグランゼコールの一つでエリート官僚養成機関のフランス国立行政学院(ENA)とパリ政治学院に入った。

 ENAの卒業生には元大統領のシラク氏、ジスカール・デスタン氏などが名を連ねる。マクロン氏の前任である現大統領オランド氏もここの出身だ。

 卒業後に公務員となったマクロン氏は、在ナイジェリアのフランス大使館に勤務していた2002年、テレビで衝撃的な光景を目にした。フランス大統領選で極右・国民戦線のジャンマリー・ルペン党首(マリーヌ・ルペン氏の父)が決選投票にまで進んでいたのである。結局、シラク氏が80%以上の票を得て当選したのだが、マクロン氏は「既存政党が大きく変わらなければ、フランスの政治は極右に握られてしまう」と、大きな危機感を抱いたという。

 パリの政治経済を牛耳るエリート層のネットワークの中にいたマクロン氏は、社会党幹部だったオランド氏の側近やエコノミストで大統領府の経済顧問を数回にわたって務めたジャック・アタリ氏と親交を深めた。

 アタリ氏の紹介により、マクロン氏はサルコジ政権下のフランス近代化委員会の一員となる。大統領へと続く長い道のりの最初の一歩だった。

 2008年、知人の紹介で投資銀行ロチルド(英語ではロスチャイルド)に入行し、企業合併を担当した。合併を成功に導く手際があまりに鮮やかだったため、「金融のモーツァルト」という呼び名が付いたほどだ。3年間の勤務で約300万ユーロ(約3億7200万円)の報酬を受け取ったが、これが後々、対抗する政治勢力に「裕福な銀行家」と攻撃される材料を与えることになった。

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