「年上の妻」だけでは語れないマクロン氏の横顔

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マクロン氏を特徴づける4つの側面

 最後に、マクロン氏の人となりの特徴をまとめてみよう。

 真っ先に挙げられるのは大いなる愛妻家ということだ。知り合って20年以上、結婚して10年のマクロン氏とブリジット夫妻。マクロン氏はことあるごとに「ブリジットのおかげだ」と繰り返している。2人の間には子供がいないが、ブリジットさんの3人の子供や7人の孫とマクロン氏は良好な関係を保っているようだ。

 フランスのファーストレディーは公職ではないが、マクロン氏は新政権でブリジットさんに何らかの公務についてもらう可能性を示唆している。

 二つ目は良くも悪くも、非常に頭が切れる「エリート」であるということだ。これまでの経歴から見てもそうだし、知人・友人のつながりもエリートおよび裕福な層に属する。

 三つ目は交渉力、説得力、ネットワーク作りに尋常でないほど長けている。元経済相とは言え、世間的にはほぼ無名だった人物が、昨年4月に立ち上げた政治運動を1年でここまで拡大させた力量は並大抵ではない。マクロン氏の同級生だった人物がテレビ局「フランス24」の取材の中で、「ブリジットさんとの結婚に大反対の周囲を説得して、結婚にまでこぎつけた。この交渉力、説得力は政治の場でも発揮されると思う」(8日放送)と述べている。

 四つ目は、「幸運に恵まれた人物」ともいえる。今回の大統領選では、現職のオランド大統領が立候補しなかったこと、右派の最有力候補とされたフランソワ・フィヨン元首相が家族の不正報酬疑惑に悩まされ、地盤沈下したこと、決選投票の相手が国民戦線のルペン氏で「極右勢力だけには政権を取ってほしくない」という意識が有権者の間で働いたことなど、マクロン氏は何重もの幸運に恵まれたという見方がある。

 加えて先述のように、既成政党に対する失望感が有権者の間にあったことも、既成政党と距離を置いたマクロン氏にプラスに働いた。

 排他的なメッセージを出すルペン候補よりも、新たな、前向きのメッセージを出したマクロン氏が好まれた、という要因もあるだろう。若くてハンサム、見るからにはつらつとしたマクロン氏の容姿は「新しいフランス」というイメージ作りにぴったりだ。

 と言っても、単なるイメージだけでは支持者を増やすことはできない。「前進」はボランティアを大量に動員して30万戸の家庭を訪問させ、約2万5000人の有権者にそれぞれ15分以上の対面インタビューを実行した。国民が何を不満に思い、何を優先したいのかを探り、その結果をデータベース化して選挙運動に使った。つまり、「戦略的に国民の声に耳を傾けた」のである。

 草の根運動、あるいはスタートアップともいえる「前進」をマクロン氏はどこまで大きくできるだろうか。ただ、それがどんな結果になるとしても、ブリジットさんとの二人三脚は変わりそうにない。

プロフィル
小林 恭子(こばやし・ぎんこ)
 秋田県生まれ。成城大学卒業後、外資系金融機関勤務、英字紙「デイリー・ヨミウリ」(現「Japan News」)の記者を経て、2002年、渡英。フリーランスのジャーナリストとして、政治やメディアについての記事を各種媒体に寄稿中。著書に『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)など。共訳書にボリス・ジョンソン著『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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