「ひふみん」引退、レジェンドは終わらない

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

将棋とは「いい手」を指すもの

将棋ファンを前に藤井四段の将棋を解説する加藤九段。「藤井さんも将棋には考えれば一番いい手があると思って指している」と将来性に太鼓判を押した(6月18日、東京・吉祥寺の「将棋の森」で)
将棋ファンを前に藤井四段の将棋を解説する加藤九段。「藤井さんも将棋には考えれば一番いい手があると思って指している」と将来性に太鼓判を押した(6月18日、東京・吉祥寺の「将棋の森」で)

 「私は95%の局面で“いい手”があると思って戦っています」

 吉祥寺のトークショーで加藤九段が一番熱く、力を込めて語ったところだ。ある局面には必ず最善の手が存在するはずだという信念。この信念を持つに至ったきっかけは、加藤九段が小学生の時の体験だった。

 新聞の将棋欄で、ある棋士が盤上に桂馬という駒を打った。次に必殺の手を狙っているのだが、相手はそれをわかっていても防ぐことができない。つまり、この時点で必勝である。「将棋とは、いい手を指すものだなと思った」と加藤九段。この少年時代の悟りが将棋観を形成した。

 その対極に、将棋は勝てばいいという考え方がある。「戦いである以上、勝って勝って覇者となる。私もそれを否定はしません。でも、100回戦って100回勝たなくてもいい、量でなく内容で行けという王道の価値観が私には流れているらしい」

 加藤九段は18歳で将棋界の最高のクラスであるA級に昇級し、20歳で当時無敵の大山名人に挑戦した。今の藤井四段、デビュー直後の羽生三冠のように、昇竜の勢いで出世階段を駆け上がったのである。

 初陣の名人戦は第1局で快勝した後、4連敗で敗退。転機が訪れたのは1963年、第4期王位戦7番勝負で大山王位に挑戦した時だった。この時、2勝4敗で負けたのだが、あることに気が付いた。

 「こちらがいくら頑張っても、大山先生はそれを上回るいい手を指し続け、負かされてしまう。要するに完敗してしまうのです。その時、将棋にいい手があるのなら、人生にもこうすれば幸せになれるというものがあるに違いないと思いました」。加藤九段が見つけた答えはキリスト教だった。

突き詰めるだけではいけない

タイトル戦常連だった頃の加藤九段。十段戦では中原誠十段(当時)と激闘を繰り広げた(1977年1月撮影)
タイトル戦常連だった頃の加藤九段。十段戦では中原誠十段(当時)と激闘を繰り広げた(1977年1月撮影)

 1970年代後半から加藤九段はタイトル戦の常連となり、中原誠名人(当時)らと激闘を繰り広げた。棋王2期、王将1期とタイトル獲得も続いた。

 80年5月、妻の紀代さんから「タイトル戦も続いているので、気分転換に行ってらっしゃい」と勧められ、イスラエル巡礼の旅に出た。

 バチカンにも足を伸ばし、毎週水曜に行われるローマ法王ヨハネ・パウロ2世(当時)の謁見に参加した。信者が歓声をあげる中、加藤九段はカメラのシャッターを押し続け、「ビバ・パパ(ローマ法王万歳)」と叫んだ。すると法王は、加藤九段の方を向いて手を振られたという。

 「その時、香車1本強くなったと思いました」。つまり、自分は以前よりはっきり強くなった、と心の中に自信が湧いてきたのである。聖地巡礼の旅に出ている間、将棋の研究はしていない。加藤九段は語る。「将棋の研究は時間に比例して実りが得られる場合と、気分転換や発想の転換で前の努力が花開く場合の2通りがある。将棋は突き詰めていくだけだと危険で、行き詰まってしまうことが経験でわかっています」

 この気分転換が大きかった。帰国から半年後、中原名人から十段を奪取。82年の名人戦7番勝負では実質10局という空前の大激闘の末、名人を獲得し、棋界の頂点に立った。

【あわせて読みたい】
将棋界のレジェンド・ひふみん引退
藤井聡太四段、歴代単独1位の29連勝なるか
藤井フィーバー、指すだけではない将棋の楽しみ方
19連勝の藤井四段、プロはどう見ているのか

1

2

3

4

無断転載禁止
430188 0 深読み 2017/06/26 12:33:00 2017/06/26 12:33:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20170626-OYT8I50019-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み_東京2020オリンピックパラリンピックキャンペーン

アクセスランキング

 


東京オリンピックパラリンピックオフィシャル新聞パートナー

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ