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このままでは日本の「サンゴ礁」が危ない!

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日本最大のサンゴ礁海域で大規模な白化現象

 では、サンゴの白化現象はどれくらいの規模で起きているのだろうか。

 2016年夏、鹿児島県の奄美群島から沖縄県の八重山諸島にかけての広い海域で、大規模なサンゴの白化現象が起きた。特に、八重山諸島にある石垣島と西表島(いりおもてじま)の間にある「石西礁湖(せきせいしょうこ)」では、90%以上のサンゴが白化する事態になった。石西礁湖は、面積400平方キロ・メートルともいわれる日本最大のサンゴ礁海域で、事態は極めて深刻な状況にあることがわかるだろう。世界のサンゴ礁の中でも生物多様性がとりわけ豊かだとされ、各国の研究者から注目されている海域で大きな危機が進行しているのだ。

 環境省は、12年度から「海洋生物レッドリスト」の作成を行っている。生物学的観点から絶滅の危険度を評価基準に当てはめて評価し、その結果をリストにまとめたもので、海洋生物を魚類、サンゴ類、甲殻類など5分類にして発表している。

 今年3月に公表された最新のレッドリストには、合計56種の海洋生物が掲載された。サンゴ類は、すでに絶滅した1種(オガサワラサンゴ)を含む計15種が、ごく近い将来に絶滅の危険性が極めて高く懸念が大きい「絶滅危惧IA類」に次いで絶滅の恐れが強い「絶滅危惧IB類」などにランクされた。

 深刻な事態を前にして、国も対策に乗り出している。

 環境省の主催する「サンゴ大規模白化緊急対策会議」が4月に沖縄県恩納村(おんなそん)で開かれた。海水温の上昇に伴って沖縄の海域にあるサンゴが死滅している現状に危機感を抱いた同省が開催を呼びかけた会議で、50人以上の専門家が厳しい現状認識を共有して緊急宣言を取りまとめた。

 緊急宣言は、<2070年代には日本近海からサンゴが消滅する可能性がある>との問題意識に立ち、とりわけ緊急性の高い取り組みとして、(1)サンゴ死滅の現状を正確に把握するためのモニタリング(監視)の推進(2)サンゴを優先的に保護・保全する海域の特定と対策の検討(3)サンゴ再生の技術開発・促進――などを盛り込んだ。

 今回の緊急対策会議に出席した環境省の比嘉奈津美政務官は、「緊急宣言を踏まえ、できることから早急に取り組みを進めたい」と述べ、スピード感を意識したサンゴ保護策の重要性を表明した。

 環境省は、対策会議から2か月後の6月、白化の深刻な石西礁湖で、さらに6月から7月にかけては、宮古島・石垣島・西表島周辺でも、サンゴの分布と白化現象の被害を調べる大規模なモニタリングを実施した。その結果、石西礁湖では、生きたサンゴの面積が約30%から約13%に減っていた。宮古・石垣・西表各島のエリアでも、石垣島西岸で50%が5%に激減した地点を確認。宮古島周辺では40%が10%になった地点があるなど、サンゴの生息状況が悪化していることがわかった。

 こうした状況を踏まえて環境省は、サンゴを優先的に保全する地域の特定を目指し、これまで同省や沖縄県、民間団体が個別に行ってきた分布調査のデータの融合を図り、早ければ18年度末までにデータベースを整備する事業にも乗り出した。サンゴの生態は気候変動の影響で変わる可能性もあることから、将来的なサンゴ礁の分布域に関する「予測研究」の結果もデータベースに組み入れるなどの工夫も施し、基礎データの充実を図っていく予定だ。保全地域の具体的な選定に向けて、有識者に対する意見聴取も準備が進められる。

期待集まる新里・東大准教授の「DNA研究」

健全なサンゴ(座安佑奈博士提供)
健全なサンゴ(座安佑奈博士提供)

 サンゴ礁の死滅に歯止めをかけるにはどうしたらいいのか? 本質的な解決策は地球温暖化の抑制だが、妙案はない。

 そこで、科学技術を生かしてサンゴの移植や養殖を進め、サンゴをよみがえらせる研究の必要性が増してきた。特に進展の著しいDNA研究をサンゴの白化対策に生かす試みが本格化しようとしている。

 さまざまな動きがある中で、沖縄科学技術大学院大学から今年2月に東京大学大気海洋研究所に移籍した新里(しんざと)宙也(ちゅうや)准教授の研究に期待が集まる。

 新里准教授は、サンゴと褐虫藻のゲノム(全遺伝情報)を世界で初めて解読した。ゲノム解読は、生き物としてのサンゴと褐虫藻の生態を知るうえで、貴重な基礎データを提供してくれる。その生態をより詳しく知ることができれば、サンゴを増殖するプロジェクトへも応用できる――と期待されている。

 サンゴは卵子と精子を持っている。沖縄の海では毎年6月ごろに産卵が行われ、通常の受精を経てサンゴの子孫が育っていく。サンゴの赤ちゃん(幼生)は、海の中を浮遊して別の場所に定着し、そこで新しい群体を形成する。

 一方でサンゴは、個体分裂でも増殖することができる。この場合は、受精を経ずに個体がどんどん分裂して増え、群体を作っていく。

 分裂で増えたサンゴは、どれも遺伝子が一緒のクローンだ。これがやがて成長し、産卵するようになっても、クローン同士では受精しない。結果的に、そのサンゴ礁の遺伝子に多様性は得られず、生息環境に変化があった時は、変化に耐えられず全滅する恐れがある。

 海の中の環境変化に強く、生き延びる可能性の高いサンゴ礁とは、個体分裂で増えたクローンでなく、受精で生まれたサンゴを増やすことにほかならない。

 ところが、サンゴは個体の識別が難しい。遺伝的背景が異なっていても、どれも見た目は一緒ということが珍しくない。そこで、新里准教授らの研究成果が注目される。

 新里准教授の研究チームは、解読したゲノムを基に、サンゴのそれぞれの個体を特徴づける「DNAのわずかな違い」(マイクロサテライトマーカー)を見いだした。この「違い」を調べれば、見た目では全く区別がつかないサンゴでも、クローンかクローンでないかを判別できるようになったのだ。

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