直葬、散骨、墓じまい…進む「弔い簡素化」の行方は

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寺とのかかわり

 「お葬式は仏式で」という構図も崩れつつある。仏教やお寺が檀家(だんか)にとって、葬式と法事だけで接点をもつ存在となって久しいが、葬送の変容で寺の経済的基盤がさらに大きく揺らいでいる。昨今では、菩提寺があることが子孫にとって負の遺産になるとして、「寺と縁を切りたい」と考える高齢者も少なくない。墓の引っ越しを名目に、檀家をやめる人もいる。もともと、多くは信仰で結ばれた関係ではなく、葬儀や墓を媒介とする関係であることが多いため、葬送のかたちが変われば寺との関係も変わるのは当然だ。

 一方、首都圏では、菩提寺をもたない遺族が少なくなく、葬儀社を介して僧侶が派遣されてくることは珍しくない。実際、インターネットで「僧侶派遣」と入力して検索すると、料金を明示した僧侶派遣会社がいくつもヒットする。「後々、寺との付き合いがないほうが気楽」「料金が明示してあるので安心」と感じる遺族もいるということの表れだ。

「弔いの無形化」の行方

「ギャーテーギャーテー……」木魚のリズムに合わせ、般若心経を読み上げるロボット(東京・江東区で8月に開かれた「エンディング産業展2017」の会場で)
「ギャーテーギャーテー……」木魚のリズムに合わせ、般若心経を読み上げるロボット(東京・江東区で8月に開かれた「エンディング産業展2017」の会場で)

 お葬式やお墓は、死んでいく人と、それを見送る側の残される人の双方がいなければ成立しない。故人を大切に思う遺族がいないのであれば、お葬式は遺体処理で十分かもしれないのだ。

 実際、「死んだ後のことはどうでもいい」「遺骨は捨ててくれ」と公言する人が少なくない。「自分は死んだら無だ」と思えば、死後のことはどうでもいいかもしれない。お葬式の簡素化や墓じまいに歯止めがかからないのは、その必要性を多くの人が感じないから、というのもひとつの理由だ。

 火葬のみで済ませたからといって、遺族は故人をないがしろにしているわけではない。むしろ、参列者の接待などでばたばたするよりも、亡くなってから火葬までの最後の時間をゆっくりと遺体と一緒に過ごせたことに満足している遺族もいるのだ。それで遺族が死の受容をできれば、何の問題もないだろう。

「遺影はスマホで」。デジタル時代の追悼はこんな形に?(東京・江東区で8月に開かれた「エンディング産業展2017」の会場で)
「遺影はスマホで」。デジタル時代の追悼はこんな形に?(東京・江東区で8月に開かれた「エンディング産業展2017」の会場で)

 その一方で、遺体は亡くなった病院から安置施設や火葬場付設の霊安室へ直行し、火葬に家族が立ち会うだけであれば、故人と一緒に過ごす最後の時間はない。もし、「それでいい」と思うなら、そうした関係性こそが問われるべきなのではないだろうか。相手は亡くなっているのだから、遺体と一緒に過ごす時間は無意味だという考えもあるだろう。それでも、「最後の時間を一緒に過ごしたい」と、残された人が自発的に思えるかどうか。故人と一緒に過ごしたいと思う人が誰もいない人生は、果たして幸せなのだろうか。

 死者は、いずれは忘れられていく存在なので、そもそも残された人のなかで記憶されなくてもよいと考える人もいるかもしれない。だが、その場合でも、残された人の中で「死者は浄土へ行った」「星になった」「草葉のかげで見守っている」など、死後の魂の行き場が必要になる。死んだら誰からも記憶されず、生きた証しもなく、無になるだけであったら、生きていること自体がむなしくなったりはしないだろうか。

 宗教的な来世観をもたない人が増えてきた現代の日本では、死者は残された人の記憶のなかで生き続けるしかない。その感覚があるのであれば、お葬式やお墓の無形化は何の問題もない。しかし、昨今の現象は、死者とのつながりがないからこそのお葬式やお墓の無形化であって、これは、社会における人と人とのつながりが希薄化していることの象徴でもあるのだ。そう考えると、弔いの無形化は、互いに信頼し合い、「おたがいさま」で助け合う意識を持てる人間関係が築けない限り、ますます進んでいくだろう。

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プロフィル
小谷みどり(こたに・みどり)
 第一生命経済研究所主席研究員。博士(人間科学)。大阪府出身。専門は生活設計論、死生学、葬送問題。最新著は、『「ひとり死」時代のお葬式とお墓』(岩波新書)。他に、『ひとり終活』(小学館新書)、『だれが墓を守るのか 多死・人口減少社会のなかで』(岩波書店)、『今から知っておきたい お葬式とお墓45のこと』(家の光協会)、『変わるお葬式、消えるお墓<新版>』(岩波書店)など。共著多数。

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