気に入らないアノ人に心乱されない技術
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「いつも上から目線でかんに障 る」「自分の話ばかりでわがまま放題」「関係ないのに横槍 を入れてくる」……。職場、学校、近所づきあいの中で、一つひとつの言動がどうも鼻につく人がいる。関わらなければいいと思っているのに、どうしても目についてイライラしてしまう。気に入らない人に心をかき乱されない方法はないものだろうか。精神科医の原井宏明氏に解説してもらった。
人間関係は安全で豊かになったか?
世の中は安全で豊かになり、この100年で日本人の平均寿命は倍近くになりました。
警察庁などの統計では、1970年と2016年を比べると、交通事故死者数と殺人事件被害者数は、いずれも4分の1以下になっています。
国内の携帯電話契約数は1億5000万台を超えて、2台持っているという人も珍しくありません。スマートフォンに向かって話しかければ、人工知能(AI)がその言葉を理解し、おすすめの店にも案内してくれるようになりました。
技術が進歩したことに疑いの余地はありません。では、私たち自身はどうでしょう。
人と人との関係も、安全で豊かになったのでしょうか?
他人を罰することで興奮する
怒り、妬み、嫌悪、いら立ち、被害感情や義憤といった感情のメカニズムは、100年たったからといってたいして変わるものではありません。
たとえば、ここ最近、テレビや週刊誌では不倫報道が花盛りです。不倫は以前からありました。かつてと違うことといえば、DNA鑑定によって、親子関係の確定が可能になったことでしょう。
仲むつまじい夫婦を「オシドリ夫婦」と言うように、鳥類のつがいの絆は非常に強いと信じられています。特にモズは、強固に一夫一妻を守り、不倫などあり得ないとされていました。ところが、ヒナのDNAを調べた研究では、”婚外子”がなんと1割を占めていることが明らかになっています。
ワイドショーなどを見て、自分とは縁もゆかりもない他人の不誠実さを、義憤をもって攻撃する現象もまた昔からあることです。
こうした行動は、「利他的な罰」と呼ばれ、最近の脳科学のホットな話題になっています。攻撃者にとっては直接的な利益がないのに、規範を逸脱する者を時間と手間をかけて徹底的に罰しようとする行動です。
そうした行動をするヒトの脳を調べると、逸脱者を罰することによって「脳内報酬系」が刺激されることが報告されています。快感ホルモンであるドーパミンが放出され、他人を罰することで興奮や満足を感じるのです。
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