戦後レジームの曲がり角、ドイツ連邦議会選の衝撃

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政権党から約150万票奪ったAfD

ベルリンに流れ着いたシリア難民たち(2015年12月撮影)
ベルリンに流れ着いたシリア難民たち(2015年12月撮影)

 これに対し、4年前に結成されたばかりのAfDの得票率は、前回と比べて7.9ポイントも増えて12.6%となった。公共放送局ARDの調査によると、かつてCDU・CSUに票を投じた有権者のうち、約98万人がAfDに投票した。AfDは、SPDからは47万票、緑の党からは4万票を奪っている。

 この結果、大連立政権を構成していたCDU・CSUとSPDは、議席を105も減らすことになった。

 AfD躍進の最大の理由は、2015年に起きた難民危機だ。メルケル首相は当時、ハンガリーで立ち往生して首都ブダペスト駅の周辺に野宿していたシリア難民ら約80万人を受け入れた。メルケル氏が、他の西欧諸国と協議せずに、人道上の理由から一種の「超法規的措置」を取ったことは、多くのドイツ人を怒らせた。

 旧東ドイツでは、失業率が西側に比べて高い。失業者に対する給付金や公的年金についても、西側より低く設定されていた。西側の企業はこの地域に本社を持たないため、今も若者を中心として、西側への人口流出が続いている。このため旧東ドイツでは、旧西ドイツ、そして政府に対する強い「怨嗟(えんさ)」が渦巻いている。

 難民危機は、旧東ドイツ市民がメルケル政権に対する怒りを爆発させるきっかけとなった。彼らはAfDの政策を理解していなくても、メルケル政権を罰するためだけに、AfDに票を投じた。

 旧東ドイツのザクセン州では、AfDの得票率が27%となり、CDUを抜いてトップになった。旧東ドイツ全体では、AfDの得票率は22.5%に達し、旧東ドイツに限っていえば第2党である。今回の選挙結果は、メルケル政権に対して、東側の有権者が不信任の意思表示をしたものだと言える。

戦後レジームの解体目指すAfD

 AfDへの支持者が増えているのは、東側だけではない。旧西ドイツのCDU・CSU支持者は、「メルケル首相によって、保守政党の政策が左傾化した」という強い不満感を抱いた。保守勢力の牙城だった旧西ドイツ南部のバイエルン州で、AfDが12%の得票率を記録したことは、西側でも大連立政権の難民政策に対する不満が強まっていることを浮き彫りにしている。

 私はドイツに27年前から住んでいるが、今回のAfD躍進には、これまで一度も経験したことのない不気味さを感じる。13年に経済学者ベルント・ルッケ氏がAfDを創設した時、同党の最大の目標はドイツをユーロ圏から脱退させ、ギリシャなど南欧諸国への支援をやめさせることだった。

 だが、その後AfDの党員の間には、反イスラム主義などを掲げる極右思想の持ち主が増え、急速に過激化した。創設者であるルッケ氏は、党があまりにも右傾化したために、AfDを脱退してしまった。

 AfDが目指すものは、一言で言えば、ドイツの戦後レジーム解体だ。彼らの掲げる政策は、ユーロ圏脱退のほか、外国政府の資金で建設されるイスラム教寺院の禁止、ミナレット(イスラム教寺院の尖塔(せんとう))の禁止、全身を覆うチャドルの禁止、国境管理の強化、歴史教育の見直し、脱原発政策と再生可能エネルギー拡大政策の見直し、徴兵制の復活など、過激なものが多い。

 AfDの幹部は、次のような発言を行い、リベラル派の市民やメディアから強く批判された。

 「イスラム教はドイツの憲法や文化と相いれない」

 「難民が警官の制止を無視して、国境を越えてドイツに入国しようとした場合、警官は銃で撃ってでも入国を阻止するべきだ」

 「アフリカは人口過剰。欧州がアフリカの過剰人口を移民として受け入れる限り、アフリカ人は増殖し続けるだろう」

 「ジェローム・ボアテン(ドイツ国籍のプロサッカー選手。母親がドイツ人で、父親がガーナ人。ベルリン生まれ)は、ドイツ人によってサッカー選手としては高く評価されている。だが人々は、彼が隣の家に引っ越して来たら歓迎しないだろう」

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428497 0 深読み 2017/09/28 05:20:00 2019/02/06 17:00:03

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