アマゾン電子書籍「最優遇契約」見直しの影響は?

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アマゾンの見直しの影響は?

 さて、アマゾンがこういった同等性条件で出版社などを拘束するのをやめたことで、今後どのようなことが起こるでしょうか?

 ホールセールモデルの場合、アマゾンは卸売価格で出版社側を拘束できなくなります。アマゾンが今後もプライスマッチングを行えば、出版社側が他の電子書店より高くアマゾンに卸していた場合、エブリデー・ロー・プライスのための費用がアマゾンに大きくのしかかってくる可能性もあります。

 実際のところ、アマゾンのプライスマッチングを狙って、出版社側が自社や関連会社の電子書店で極端な値下げ(ダンピング)を行って、固定されたアマゾンへの卸売価格との差益を稼ぐという、通称「アマゾン・ハック」と呼ばれるような手法が行われていたという(うわさ)もあります。このような事情もあり、一時期よりプライスマッチングの対象商品や頻度は少なくなっていたようです。

 なお、著者がアマゾンと直接取引を行う「キンドル・ダイレクト・パブリッシング(KDP)」はホールセールモデルの契約ですが、出版社などとの契約とは異なり、卸売価格の同等性条件は原則存在しないため、今回の見直しの対象外になっています。

 エージェンシーモデルの場合、今後も主流は出版社側による「全店一斉セール」だとは思いますが、アマゾン以外で独自セールが行われる可能性も出てくるでしょう。

 いずれにしても、アマゾン以外の電子書店にとっては健全な競争がしやすい状態になったと言えそうです。これは、各電子書店のサービスの質を向上させ、ユーザーにとってのメリットとなります。

 また、ラインアップなど他の拘束条件もなくなるため、例えば「Netflix」「AbemaTV」「Amazonプライム」などの動画配信サービスでよく行われている「独占配信」や「先行配信」が、電子書店でも珍しくなくなるかもしれません。

 アマゾン以外の電子書店がシェア獲得のため攻勢をかけるなどすれば、業界の構図が大きく変わる可能性もあります。

 スマートフォンの普及拡大とともに、電子出版市場は急成長しています。

電子出版市場の規模の推移のグラフ(インプレス総合研究所調べ)
電子出版市場の規模の推移のグラフ(インプレス総合研究所調べ)

 その成長率は、音楽配信や映像配信以上の勢いです。インプレス総合研究所は、2016年度の電子出版市場規模を2278億円と推計しています。そのうち「文字もの等(文芸・実用書・写真集等)」が359億円、「電子コミック」が1617億円、「電子雑誌」が302億円で、いずれも対前年比20ポイント前後の高い成長率になっています。

 今回のアマゾンの見直しにより、当面の間は「キンドルストア」でのセール回数が減るかもしれません。ただ、先述のとおり、他の電子書店との健全なサービス競争などが進むと期待され、中長期的にはユーザーのメリットとなるはずです。

 そうなれば、さらなる電子出版市場の拡大につながることでしょう。

プロフィル
鷹野 凌(たかの・りょう)
 フリーライター・ブロガー。NPO法人「日本独立作家同盟」理事長。出版学会、デジタルアーカイブ学会各会員。電子出版や出版業界に詳しい。実践女子短期大学と明星大学の非常勤講師(デジタル出版論・デジタル出版演習・デジタル編集論)も務めている。

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428394 0 深読み 2017/09/30 07:00:00 2017/09/30 07:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20170929-OYT8I50010-T.jpg?type=thumbnail

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