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保育園などの開設計画が、近隣住民からの「園児の声がうるさい」などといった苦情で延期や断念に追い込まれるケースが全国で相次いでいる。一方で、厚生労働省が9月に発表した待機児童数は3年連続で増加となり、保育施設の確保は「待ったなし」の状況だ。保育施設側と住民は、どのように歩み寄ればよいのか。大正大学の白土健教授が解説する。
「園児の声がうるさい」
8月29日、東京都武蔵野市で、来年4月の予定だった認可保育園の開園が延期されると発表された。周辺住民への説明会で「(保育園ができると)園児の声がうるさい」という意見があり、合意形成が難しいと判断したためだという。私は、このニュースを聞いて「またか」と思った。千葉県市川市や名古屋市中川区などでも同様のケースがあると報じられてきたからだ。

昨年11月から12月にかけて、読売新聞が全国の主要146自治体を対象に行った調査では、保育施設に関して周辺住民から苦情を受けたことがある自治体は109に上り、実に7割以上を占めた。開園中止や延期に至ったケースは16件あった。苦情の内容は、子どもたちの声や運動会やその練習の時の音、太鼓やピアノなどを演奏する音が「うるさい」というものだった。
増え続ける待機児童
一方で、認可保育施設に入ることを希望しながら
その反面、子どもの人口は36年連続で減少している。今年の調査では1571万人。ピークだった1954年の2989万人からほぼ半減し、人口に占める割合も12.4%と、43年連続で低下した。このままでは日本という国家の将来も危ぶまれる状況だ。もちろん、少子化には様々な要因があるが、「子育ての難しさ」が大きな要因であることに異論はないだろう。親が働きながら子どもを育てるためには、安心して子どもを預けられる保育施設が不可欠なのだ。
待機児童問題を解消するために、保育施設の増設が必要であることを理解できない人はいないはずだ。しかし、自分の家の近くに建設計画がもちあがると、多くの地域で住民が賛成派と反対派に分かれ、コミュニティーが分断されてしまう。それが現実でもある。
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