カズオ・イシグロがノーベル文学賞に選ばれた理由

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 2017年のノーベル文学賞に、長崎市出身の日系イギリス人、カズオ・イシグロ氏が選ばれた。しかし、日本でイシグロ氏の功績を知る人は少ない。イシグロ氏とは何者なのか。また、彼の作品の魅力とは何か。長年、カズオ・イシグロ文学を研究してきた京都外国語短期大学の荘中孝之教授に聞いた。(聞き手・読売新聞メディア局編集部 伊藤譲治)

予想していなかった受賞

――イシグロ氏の受賞は予想していましたか。

受賞決定後、取材に応じるイシグロ氏(5日、ロンドンで)
受賞決定後、取材に応じるイシグロ氏(5日、ロンドンで)

 今年は本当に予想していませんでした。15年に最新作『忘れられた巨人』を上梓してから次の小説が上梓されていなかったので。候補に挙がっているのは知っていましたが。もう一作ぐらい世界に認められる小説を書けば、十分可能だろうとは思っていました。


――イシグロ氏は1982年の『遠い山なみの光』から『忘れられた巨人』まで長編7作を発表しました。イシグロ文学の特徴とは何でしょうか。

 時代に翻弄されている人の悲しさなどが描かれている点です。人物に対して温かいまなざしがあり、そこに人間の尊厳を見いだしていこうとしているように思います。


――カズオ・イシグロが影響を受けた作家として、川端康成や谷崎潤一郎の名前が挙げられています。

 川端らの影響を受けていることは確かだと思いますが、イシグロ自身はそういった作家(川端ら)とはかなり異質で、「自分とは全然違う」と言っています。ただ、彼は映画監督の小津安二郎や成瀬巳喜男の影響を受けているのは認めています。彼の根底には日本的な要素があるとは思います。直接の影響ではないにせよ、彼の作品には表れてきています。


――本場の英国人も驚くような格調高い英語の文体を使っているといわれています。

 『日の名残り』などの英語は非常に端正だと思います。逆に日本人らを題材にした『遠い山なみの光』などは独特の日本文学の英訳のような雰囲気があります。また『忘れられた巨人』は、わざと「変わった英語」をつくり上げようとしているようです。現代の人が話す英語、今の英語とは違ったものを表現しようとしています。


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