どうなる? 「イスラム国」崩壊後の中東

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 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」がイラク第二の都市モスル、「首都」と位置づけていたシリアのラッカの2大拠点を失い、21世紀の中東に 忽然 ( こつぜん ) と出現した「カリフ制国家」は事実上、崩壊した。ジハード(聖戦)主義者による狂気の統治が地図上から消える意義は大きいが、安定の回復にはほど遠い。「イスラム国」の残党は拡散し、共鳴者を扇動したテロは世界各地で続く。そして今、「『イスラム国』後」のシリア、イラクで勢力圏の確保を目指すパワーゲームは、当事者たちの仁義なき縄張り争いが本格化している。 混沌 ( こんとん ) とした中東の新局面を、現地特派員の経験も長い読売新聞調査研究本部の岡本道郎主任研究員が読み解く。

世界を震撼させた「イスラム国」

 「この歴史的な勝利を全人類、特にテロの犠牲となったシリアの殉教家族に捧(ささ)げる」。米国の支援を受けたクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」のタラール・シロ報道官は10月20日、「イスラム国」が3年にわたり支配したラッカの完全解放を宣言した。

 7月に「イスラム国」のイラク最大拠点モスルがイラク政府軍に奪還されたのに続き、「首都」ラッカが約5か月に及ぶ包囲戦の末、ついに陥落した。トランプ米大統領も10月21日、2大拠点の制圧を受けて、「『イスラム国』の終わりが見えた」とする声明を出した。イラク、シリアで残党を掃討する作戦はまだ続くが、大きな節目を迎えたことは間違いない。

 これまでの「イスラム国」の歩みを振り返ってみよう。

 約3年3か月前の2014年6月29日、イラクでの宗派対立とシリア内戦が招いた権力の空白につけ込み、両国にまたがる広大な領域を勢力下に置いた「イスラム国」は、指導者アブバクル・バグダーディをカリフ(預言者ムハンマドの後継者)とし、「カリフ制国家」の樹立を宣言した。国民国家概念と既存国境を打ち破ったその衝撃は、中東と世界を震撼(しんかん)させた。

 「イラクもシリアもない、民族も国籍もない、すべてのムスリム(イスラム教徒)のための国が出現した。カリフに忠誠を誓い、この地に移住せよ――」。全世界の信徒にこう呼びかけた「イスラム国」は、イラク政府軍などから奪った近代兵器で武装したうえで、原油の密売や誘拐の身代金、住民からの徴税を「国家収入」とし、ジハード主義組織として初めて、支配領域内で「統治」を行った。

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