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    自動車

    究極のエコカー?EVは矛盾を乗り越えられるか

    エンジン技術コンサルタント 畑村 耕一
     英国、フランスが2040年をめどにガソリン・ディーゼル車の販売を禁止する方針を決め、電気自動車(EV)に切り替える動きが進んでいる。EVが二酸化炭素(CO )を排出せず、「環境にやさしい」とされていることが背景にある。日本でもEVの普及が進みつつあり、ガソリンスタンドは減る一方で、世の中には「エンジン車はいずれなくなる」という風潮が生まれ始めた。すべての車をEVにすれば、本当に「環境にやさしい」社会が実現するのだろうか。自動車の内燃機関(エンジン)や内部構造に詳しい研究者の畑村耕一氏は異議を唱える。

    「EVブーム」火を付けたのは日欧の技術戦争

    • 東京モーターショーのフォルクスワーゲンのブース。現在は電気自動車の開発に注力している。
      東京モーターショーのフォルクスワーゲンのブース。現在は電気自動車の開発に注力している。

     最近の「EVブーム」の発信源とは、実は自動車のパワートレーン(エンジンなどで発生した回転力をタイヤに伝える仕組み)技術をめぐる日欧の激しい競争だと筆者は考えている。

     2015年にフォルクスワーゲン(VW)のディーゼル車で、排出ガス規制をめぐる不正が発覚した。VWが排ガス規制を不正に回避するソフトウェアを使っていたことがわかったのだ。排ガス試験が行われていることをソフトウェアが検知し、その時だけ有害物質を取り除く浄化装置をフル稼働させるという悪質なものだった。

     他の欧州メーカーのディーゼル車も不正はなかったものの、(試験ではない)実走行での排出ガスの有害物質が規制値を大きく超えていることが明らかになった。これで、COに関してはガソリン車より「地球にやさしい」とされているディーゼル車は完全に信頼を失ってしまった。

     地球温暖化防止が世界的課題となる中、CO規制を乗り切るための切り札だったディーゼル車を失った欧州メーカーが目を付けたのは、電気とガソリンの両方を使えるプラグインハイブリッド車(PHV)だった。欧州では、あるCO排出規制を発表した。メーカー側のロビー活動が奏功したとの見方もある。

     21年から適用されるこの排出量規制では、PHVが有利となるように「ECE R101」という欧州の特別な燃費測定法が適用され、電力による走行時はCOの排出を「ゼロ」とみなす。この測定法では、50キロ・メートルのEV走行ができるPHVは、計算上(カタログ値)のCO排出量が3分の1に軽減されるのだ。欧州の各メーカーは実質的にこのルールを追い風に、PHVをどんどん送り出している。

     欧州のPHVは、先述の基準を満たすのが主な目的のため、電力のみでの走行が終わった後は、HV走行に切り替わるが、その際の燃費はガソリン車に比べ多少良い程度だ。日本のPHVやHVのようにエンジン走行とモーター走行を頻繁に切り替え「最適制御」する車とは「似て非なるもの」と言っていい。

     だが、それ以上に強く指摘したいのが、EV走行時も火力発電所などで発電した電気を使うわけだから、間接的にCOを排出する可能性があることだ。

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    2017年12月21日 07時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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